2014年05月15日

議決権取得型企業再生ファンド

「再生ファンド、議決権だけ集め経営陣と対話」(日本経済新聞2014.5.14)

(記事一部引用)
 独立系の企業再生ファンド、キーストーン・パートナース(東京・文京)は新たなスキームによる企業再生を始めた。信託銀行を介して個人株主など多数の株主の議決権を束ね、発言力を確保する。株式そのものを取得する通常の買収ファンドに比べ、資金負担が軽く会社側の抵抗感も小さくて済む。第1号として高機能黒鉛大手、東洋炭素への経営参画を進めており、近く臨時株主総会の開催を求める。
(引用終わり)


記事によれば、株主権を自益権と共益権に分け、個人株主から後者のみを取得して、集めた議決権を会社に対して行使するというスキームのようです。

もっとも、会社法は株主権を自益権と共益権とに区別しているわけではなく(概念上の区別は明確ですが)、自益権を有するが共益権を有さない株主権とか、その逆の株主権の存在は想定していないといえます。

株主総会で議決権を行使できるのは株主名簿上の株主(自益権とか共益権とか関係なく)であることは明確です。

記事のスキームは、個人株主が信託銀行に株式を信託譲渡して信託銀行が株主名簿上の株主(議決権者)となり、個人株主は信託受益権者となることが推測できます。ファンドは、個人株主に一定の対価を支払って共益権を取得(正確には、個人株主から議決権行使を授権される委任関係のように思われます)し、その授権に基づき、個人株主をいわば代理して、信託銀行に対して議決権行使を指示するというような関わり方のように考えられます(完全に推測ですが)。

そうすると、個人株主とすれば、共益権譲渡の対価及び自益権に基づき取得する配当やキャピタルゲインから、信託報酬やファンドへの手数料・報酬等を支払うことになり、本件スキームを利用することによりそれらのコストを上回る配当等増加の利益を獲得できるかどうか、という利害状況になるように思われます。共益権の対価をどう評価するのか、配当増加や株価上昇に対するファンドの寄与度をどう評価するのか、逆に、配当減少や株価下落の場合の損失負担をどう配分するのか(ファンドは金銭的責任を負うのか。負わないと思われるが。)など、興味深いところもあります。

委任状勧誘(プロキシファイト)が、個別の議案について、勧誘者が議決権行使方針を明示してそれに賛同する委任状を集めたうえでその通りに議決権行使するというものであるのに対し、本件は、包括的な議決権をファンドに譲渡(委任)するという点が異なるようといえそうですが、上記のような確定コストを負担してまで、赤の他人のファンドに議決権を自由裁量に近い形で委ねる個人株主の需要がどれほどあるのかという点でも注目されるところです。

posted by kinyu-bengoshi at 17:59| 日記
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