2014年05月02日

私的整理における強制債権カット

「事業再生を迅速に 債権放棄、全員の同意不要」(日本経済新聞2014.4.29)

(記事一部引用)
 政府は企業が不振事業を切り離して事業再生しやすくするため、不良債権の放棄を取引銀行に求めるルールを緩和する。会社更生法のように司法に頼ることなく再建できる「私的整理」の制度を見直すのが柱。債権放棄には銀行団全員の同意が必要だが、多数決で受けられるようにする。早期再建が可能な私的整理を使いやすくして産業の新陳代謝につなげる。
 政府が見直すのは私的整理の代表的な手段である「事業再生ADR制度」。
(引用終わり)


法的整理手続と対置される私的整理手続では、債権放棄は全債権者の同意が必要というのが前提となります。

債権はれっきとした私権、財産権であり、これは、債権者自らが放棄しない限り、法律によらずに奪うことはできないのが原則です。そこが法的整理と私的整理の最大の分かれ目であり、私的整理(非法的整理)において、同意しない債権者の債権も多数決で強制的にカットするというのは、本来概念矛盾といえます(英米ではこのような私的整理制度があるようなので、どのように概念整理をしているのか関心あるところです)。

銀行等の債権者は、法的手続によらない限りは強制的にその権利を奪われることはないという法的な保障がある前提で与信活動を行っていますが、これが、法的手続によらずに強制カットされる可能性があるとなると、そもそもそのような危なっかしい「権利」など権利の名に値するのか、裁判所という国家権力の主宰、関与の下での公平、公正が担保された適正な手続もなしに他人の意思で私権、財産権が侵害されるなど耐え難い、ということで、かえって融資等の萎縮や混乱を招く可能性もありそうです。

結局、このような私的整理制度創設のためには法的な手当てが必要になるように思われるところですが、そうすると、そのような法で定めた手続の下で行われる債権カットは、結局「法的」整理ということになります。

事業再生ADRの活用があまり進んでいないのは、別の理由があるように思われるところです。
posted by kinyu-bengoshi at 13:59| 日記
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