2013年05月23日

官民ファンド監視委員会

「「官民ファンド」の監視を委員会で議論 政府、成長戦略に向け」(産経新聞2013.5.20)

(記事引用)
 政府は20日、成長戦略で本格活用が見込まれている「官民ファンド」に対する監視のあり方を有識者らが議論する「官民ファンド総括アドバイザリー委員会」の初会合を開いた。
 官民ファンドは、政府と民間企業が共同出資した基金。座長の世耕弘成官房副長官は「国民の税金を使う以上しっかり機能しているかをチェックする必要がある」と強調した。
 この日の会合では、すでに運用されている産業革新機構などの現状が報告された。有識者からは、官民ファンドについて民間側の出資割合を十分に高めて、民間ノウハウを生かさないと「単純な国家ファンドに陥る危険性がある」といった意見が出た。
 委員会は、官民ファンドが政策目的に沿って投資案件を選定しているかなどをチェックする仕組みを検討し、6月中に結論を出す方針。
(引用終わり)


官民ファンドに対する監視のあり方を議論する政府内の委員会が設置され、初会合が開かれたようです。
官民とはいえ、あくまで官が主導し、民は少ない金額を出資して協力するという形態が多いので、官製ファンドと言った方が実態にあっているかもしれません。
その官製ファンドの監視のあり方を、それを成長戦略で活用促進しようという官(政府)自らが議論するというものですので、お手盛りではないか、単なるアリバイ作りではないか、との指摘も想定されるところです(なお、委員会のメンバーは、内閣官房副長官以下省庁関係者15人、民間有識者4人)。

例えば、今回初会合で議論された4ファンドの1つ、株式会社産業革新機構(出資割合:官2660億円、民27社・2個人140.1億円、政府保証借入枠1.8兆円)について、会議資料を見る限りでは、同社の投資基準や投資先企業(ルネサスエレクトロニクス、LCCのピーチ、イタリア太陽光発電、チリ水事業など39社6200億円)からみて、民間の投資ファンドとどこが違うのかわかりにくいようにもみえそうです。おそらく、リスクが大きく民間ファンドではとれないリスクを取っているという説明が想定されますが、そんな民間でさえ敬遠するリスクを国が取ってよいのかとか、逆に、ルネサスのように民間ファンドが手をあげていたのを横取りしたではないか、などという反論も受けそうです(今回初会合で実際にどのようなやりとりがあったのかは議事概要が公表されるようです)。

ちなみに、会議資料では記載されていませんが、同社が公表している決算資料によれば、平成24年3月期は売上高2百万円(その前2期は0)、最終損失44億円で、同期末累積損失は87億円となっており、最終的な資金出損者たる国民からみると、これまでのところ、ファンド運営開始後3年間売上が全くない中で毎年30〜40億円もの販管費(その内訳は不明)が先行して流出しているというその経営実績は不安を感じさせるような内容といえそうです(近く公表される平成25年3月期でみると状況は違うのかもしれません)。もっとも、これら投資先企業の株価が上がり十分な売却益を確保できればこれまでの先行費用を回収して余りあることになり、これがまさにファンド事業なのですが、具体的にどういう人たちか、その経歴や過去の投資成績もわからず、運用結果に対してどのような責任を負う形になっているのかもわからないファンドマネージャーの報酬その他人件費、経費等に毎年30〜40億円払って最終的には国民の負担に帰する国のお金を投資運用されているという官製ファンド事業の仕組みについてはほとんどの国民が知らないものとみられます。

民間ファンドであれば、ファンド運営者は投資家のリターン要求のプレッシャーにさらされますが、官製ファンドの場合は、自分が投資家であることも自覚していない広く国民一般が実質的な投資家ですから、ファンド運営者に対する規律はどうしても緩くなりがちとされていますので、このようなオープンな形で監視のあり方が議論されることは意義のあるところといえます。もっとも、そもそも議論の前提とすべき決算資料などの開示資料は販管費の内訳すらも不明で中小企業の決算書以下であり、銀行に提出しても突き返されるようなレベルではないか、決算データの内訳やファンドマネージャーの情報、投資先企業の業績などの基本的情報すら開示されていないなかでちゃんと議論できるのか、監視のあり方などわざわざ議論するまでもなく、少なくとも金商法所定の有価証券報告書と同レベルの情報と投資先企業の業績を開示して実質的な投資家でありリスク負担者である国民に広くさらせばそれで監視としては十分であり、あるいはそれが先ではないか、それすらもないのに監視などありえるのか、などという指摘もありえそうです。

いずれにしても、さんざん痛い目にあい今もその処理が問題になっている第三セクターの二の舞になることがあってはならないのはいうまでもないところです。

官民ファンドについてはこれまで当ニュース解説・コラムの【金融円滑化法】都内地銀の官民ファンド緊急経済対策・劣後ローン官民ファンド【金融円滑化法】地方中小企業再生ファンド官民ファンド機構支援先企業の2次破綻などでも触れておりますので、適宜ご参照下さい。
posted by kinyu-bengoshi at 18:35| 日記
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