2013年03月07日

民法改正中間試案(消滅時効)

「契約ルール、中小に配慮 民法改正試案 個人保証、経営者に限定 約款・法定利率も見直し」(日本経済新聞2013.2.27)
「法定利率下げ、変動制に 法制審試案 民法改正15年にも 約款の不当条項無効」(日本経済新聞2013.2.18)

民法の契約ルールの見直しを進めてきた法制審議会の部会が2月26日、法改正の中間試案を決めたとのことです。銀行などが中小企業に融資する場合に求める個人保証について経営者以外は認めないなど中小企業保護に配慮したのが特徴の一つであるとしています。消費者契約の透明性向上や法定利率の見直しも盛り込んでおり、実現すれば幅広い取引に影響がありそうだと指摘しています。


ここでは、消滅時効についてみてみます。
債権の消滅時効は、原則として、「債権は、十年間行使しないときは、消滅する。」(民法167条1項)とされているとおり、10年です。
もっとも、この原則に対しては様々な例外があります。
まず、商行為によって生じた債権については、「商行為によって生じた債権は、この法律に別段の定めがある場合を除き、五年間行使しないときは、時効によって消滅する。」(商法522条本文)とされているとおり、原則として5年に短縮されています(いわゆる商事消滅時効)。これは、企業取引の迅速な結了の要請によるものです。なお、「商行為によって生じた債権」とは、当事者の一方のために商行為である行為から生じたもので足りるとされています(大審院明治44年3月24日判決)。したがって、企業の金融機関からの借入金の消滅時効は5年となり、個人の金融機関の借入金は、金融機関が銀行の場合は5年、信用金庫・信用組合など商人でない場合は10年ということになります。借入金とは逆の預金の場合も同様です(預金の消滅時効については、弊事務所HPのQ&A金融機関取引の基本 その他編Q3をご参照ください)。
もっとも、商法522条本文で「この法律に別段の定めがある場合を除き」とされ、また同条但書で「ただし、他の法令に五年間より短い時効期間の定めがあるときは、その定めるところによる。」とされているとおり、この5年間の商事消滅時効の例外となるさらなる短期の消滅時効があります。
具体的には例えば、
・工事に関する債権は3年(民法170条2号)
・生産者・卸売商人・小売商人が売却した産物・商品の代価に係る債権は2年(民法173条1号)
・運送賃は1年(民法174条3号)
・旅館、料理店、飲食店などの宿泊料、飲食料などは1年(民法174条4号)
など、当事者の職業によってより短期の消滅時効が細かく定められています。

今回の民法改正中間試案では、これらの消滅時効について、
「消滅時効
1 職業別の短期消滅時効の廃止
民法第170条から第174条までを削除するものとする。
2 債権の消滅時効における原則的な時効期間と起算点
【甲案】 「権利を行使することができる時」(民法第166条第1項)という起算点を維持した上で,10年間(同法第167条第1項)という時効期間を5年間に改めるものとする。
【乙案】 「権利を行使することができる時」(民法第166条第1項)という起算点から10年間(同法第167条第1項)という時効期間を維持した上で,「債権者が債権発生の原因及び債務者を知った時(債権者が権利を行使することができる時より前に債権発生の原因及び債務者を知っていたときは,権利を行使することができる時)」という起算点から[3年間/4年間/5年間]という時効期間を新たに設け,いずれかの時効期間が満了した時に消滅時効が完成するものとする。
(注)【甲案】と同様に「権利を行使することができる時」(民法第166条第1項)という起算点を維持するとともに,10年間(同法第167条第1項)という時効期間も維持した上で,事業者間の契約に基づく債権については5年間,消費者契約に基づく事業者の消費者に対する債権については3年間の時効期間を新たに設けるという考え方がある。
としています(法務省HP「民法(債権関係)の改正に関する中間試案(案)」)。

つまり、上記のような職業別の短期消滅時効を廃止したうえで、原則となる時効期間を10年から5年に短縮するという内容です(甲案。なお、原則10年は維持しつつ、別の起算点も規定してそこからの時効期間を3~5年とする乙案もあり)。
職業別に時効期間を細かく区別する合理性が乏しくまた煩瑣なことから、これを単純化、統一化することが今回改正の趣旨のようです。そうするとこれまでの短期消滅時効1~3年が10年に大幅長期化することになりますので、これを避けるため原則の時効期間を5年に短縮するなどの見直しを図るというもののようです。

企業の銀行からの借入金や預金のように商事消滅時効5年が適用される場合については今回改正による直接の影響はないですが、これまで1~3年の短期消滅時効が適用されていた商取引債権や商事以外の一般の債権については影響が生じます。
今後の法制審議会部会での議論を踏まえ、どのような条項となって示されるかが注目されます。
posted by kinyu-bengoshi at 21:19| 日記
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