2013年03月06日

民法改正中間試案(法定利率)

「契約ルール、中小に配慮 民法改正試案 個人保証、経営者に限定 約款・法定利率も見直し」(日本経済新聞2013.2.27)
「法定利率下げ、変動制に 法制審試案 民法改正15年にも 約款の不当条項無効」(日本経済新聞2013.2.18)

民法の契約ルールの見直しを進めてきた法制審議会の部会が2月26日、法改正の中間試案を決めたとのことです。銀行などが中小企業に融資する場合に求める個人保証について経営者以外は認めないなど中小企業保護に配慮したのが特徴の一つであるとしています。消費者契約の透明性向上や法定利率の見直しも盛り込んでおり、実現すれば幅広い取引に影響がありそうだと指摘しています。


ここでは法定利率の点についてみてみます。
法定利率とは「利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、年五分とする。」(民法404条)とされているとおり、年5%となります。
法定利率が登場するのは、「別段の意思表示がないとき」です。企業の金融機関からの借入金の場合は当然金利について合意されますので、通常法定利率が適用されることはありません(この借入金利率を「約定利率」などと言います)。
したがって、法定利率が適用されるのは、企業間取引における売掛債権や個人間の無利息の借入などの遅延損害金や不法行為による損害賠償債権などの場面が多くなります(なお、商行為によって生じた債務の法定利率(いわゆる商事法定利率)は年6%となります(商法514条))。

現行民法が制定された明治29年の金利水準がどうであったのかは調べていませんが、少なくともバブル崩壊後のここ20年でみれば、年5%や6%という水準が実勢金利水準から見て異常に高いことは言うまでもありません。
特に理不尽に見える結果になるのは、交通事故などの損害賠償において将来のうべかりし利益(逸失利益)が中間利息控除される場面かと思われます。数年後以降の将来キャッシュフローを年5%で割り引いた現在価値は実勢金利からみた実態にあわず低廉なものとなり、賠償額の低額化の一因にもなっていると思われます。

今回の改正中間試案では、法定利率について、
「法定利率(民法第404条関係)
(1) 変動制による法定利率
民法第404条が定める法定利率を次のように改めるものとする。
ア 法改正時の法定利率は年[3パーセント]とするものとする。
イ 上記アの利率は,下記ウで細目を定めるところに従い,年1回に限り,基準貸付利率(日本銀行法第33条第1項第2号の貸付に係る基準となるべき貸付利率をいう。以下同じ。)の変動に応じて[0.5パーセント]の刻みで,改定されるものとする。
ウ 上記アの利率の改定方法の細目は,例えば,次のとおりとするものとする。
(ア) 改定の有無が定まる日(基準日)は,1年のうち一定の日に固定して定めるものとする。
(イ) 法定利率の改定は,基準日における基準貸付利率について,従前の法定利率が定まった日(旧基準日)の基準貸付利率と比べて[0.5パーセント]以上の差が生じている場合に,行われるものとする。
(ウ) 改定後の新たな法定利率は,基準日における基準貸付利率に所要の調整値を加えた後,これに[0.5パーセント]刻みの数値とするための所要の修正を行うことによって定めるものとする。
(注1)上記イの規律を設けない(固定制を維持する)という考え方がある。
(注2)民法の法定利率につき変動制を導入する場合における商事法定利率(商法第514条)の在り方について,その廃止も含めた見直しの検討をする必要がある。」
としています(法務省HP「民法(債権関係)の改正に関する中間試案(案)」)。
おおまかにいうと、現行の年5%を年3%に引き下げたうえで、年1回、日銀の基準貸付利率の変動に応じて0.5%刻みで改定するというもののようです。

もっとも、金利水準の高い低いというのは相対的なものであり、年5%というのは現在の日本でみれば明らかに高すぎますが、バブル期の日本や現在のギリシャ、スペインなどから見たらかなり低いことになります。年5%を年3%にすれば解決するという問題ではないように思われるところです(もっとも、マイナス金利というのは通常ないので、表面利率水準を引き下げることの効果は当然ありますが)。
議論されていることを聞いたこともなく全くの個人的見解ですが、法定利率を年●%と定めず、その時点の市場金利とするということでもよいような気がします。市場金利とは、例えば期間別の国債利回りやスワップレートが考えられます(もっとも、スワップレートはLIBOR不正操作問題で信用性が揺らいでおり、今後制度改革により信用性が確保されることが前提となりますが)。これに一定のスプレッドを加算するという考え方もありえます。

なお、今回の改正中間試案では、中間利息控除の点については、
「(3) 中間利息控除
損害賠償額の算定に当たって中間利息控除を行う場合には,それに用いる割合は,年[5パーセント]とするものとする。
(注)このような規定を設けないという考え方がある。また,中間利息控除の割合についても前記(1)の変動制の法定利率を適用する旨の規定を設けるという考え方がある。」
としています(法務省HP「民法(債権関係)の改正に関する中間試案(案)」)。
中間利息控除と法定利率は必ずしも連動しているわけではないので(裁判例でも年4%とか年3%としている例も見られます)、改正試案でも区別しているのだと思いますが、法定利率が高すぎることの弊害が大きいのは中間利息控除の場面の方が多いように思われますので、こちらの方を適正化するような方向の改正にも期待したいところです。

なお、LIBORやスワップレートについてはこれまでLIBOR問題1LIBOR問題2LIBOR問題3LIBOR問題4LIBOR不正で逮捕とTIBORにて取り上げていますので、適宜ご参照いただければと思います。

posted by kinyu-bengoshi at 15:22| 日記
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