2013年01月15日

医薬品ネット販売規制無効判決(最高裁)

「薬ネット販売 解禁へ アマゾンなど参入検討 最高裁「禁止の省令無効」」(日本経済新聞2013.1.12)
「薬ネット販売 解禁へ 安易な省令規制に警鐘 最高裁「法に禁止明記せず」」(日本経済新聞2013.1.12)

厚生労働省は11日、省令で原則禁止している一般用医薬品(大衆薬)のインターネット販売を条件付きで解禁する方針を決めたとのことです。最高裁第2小法廷が同日の判決で「省令は違法で無効」とし、ネット通販2社に販売権を認めたことを受けた措置のようです。現時点では規制が事実上なくなり、小売りやネット企業の間で事業参入への機運が盛り上がりそうだと指摘しています。


最高裁HP(最高裁平成25年1月11日判決)によれば、事件名は「医薬品ネット販売の権利確認等請求事件」とされています。これは、原告である医薬品ネット通販会社が、被告国に対し、医薬品ネット販売を規制する省令が薬事法の委任の範囲を逸脱して違法無効であることを前提として、医薬品ネット販売をする権利があることを確認することを求めるという、公法上の法律関係に関する確認の訴え(いわゆる実質的当事者訴訟)(行政事件訴訟法4条後段)といえます。
もし原告会社が行政庁から何らかの処分を受けていたのであれば、その処分を取り消す取消訴訟(同法3条2項)を提起することになりますが(取消訴訟については、当ニュース解説・コラムの大学設置不認可に対する取消訴訟等を適宜ご参照ください)、本件ではそのような具体的な処分はなかったため公法上の当事者訴訟としたものと推察されます。なお、省令など法令そのものの違憲無効を抽象的に確認するような訴訟は認められていません(最高裁昭和27年10月8日判決)。

本件最高裁判決は、新薬事法の制定経緯や医薬品ネット販売規制についての専門家・有識者による検討会議の議論の内容等の認定事実を踏まえたうえで、「新薬事法成立の前後を通じてインターネットを通じた郵便等販売に対する需要は現実に相当程度存在していた上,郵便等販売を広範に制限することに反対する意見は一般の消費者のみならず専門家・有識者等の間にも少なからず見られ,また,政府部内においてすら,一般用医薬品の販売又は授与の方法として安全面で郵便等販売が対面販売より劣るとの知見は確立されておらず,薬剤師が配置されていない事実に直接起因する一般用医薬品の副作用等による事故も報告されていないとの認識を前提に,消費者の利便性の見地からも,一般用医薬品の販売又は授与の方法を店舗における対面によるものに限定すべき理由には乏しいとの趣旨の見解が根強く存在していたものといえる。しかも,憲法22条1項による保障は,狭義における職業選択の自由のみならず職業活動の自由の保障をも包含しているものと解されるところ(最高裁昭和43年(行ツ)第120号同50年4月30日大法廷判決・民集29巻4号572頁参照),旧薬事法の下では違法とされていなかった郵便等販売に対する新たな規制は,郵便等販売をその事業の柱としてきた者の職業活動の自由を相当程度制約するものであることが明らかである。」としました。そのうえで、「これらの事情の下で,厚生労働大臣が制定した郵便等販売を規制する新施行規則の規定が,これを定める根拠となる新薬事法の趣旨に適合するもの(行政手続法38条1項)であり,その委任の範囲を逸脱したものではないというためには,立法過程における議論をもしんしゃくした上で,新薬事法36条の5及び36条の6を始めとする新薬事法中の諸規定を見て,そこから,郵便等販売を規制する内容の省令の制定を委任する授権の趣旨が,上記規制の範囲や程度等に応じて明確に読み取れることを要するものというべきである。」として、本件省令が適法有効となるための基準を示しました。
そして、あてはめにおいて、
・新施行規則による規制は,一般用医薬品の過半を占める第一類医薬品及び第二類医薬品に係る郵便等販売を一律に禁止する内容である
・これに対し,新薬事法36条の5及び36条の6は,いずれもその文理上は郵便等販売の規制並びに店舗における販売,授与及び情報提供を対面で行うことを義務付けていないことはもとより,その必要性等について明示的に触れていない
・医薬品に係る販売又は授与の方法等の制限について定める新薬事法37条1項も,郵便等販売が違法とされていなかったことの明らかな旧薬事法当時から実質的に改正されていない
・新薬事法の他の規定中にも,店舗販売業者による一般用医薬品の販売又は授与やその際の情報提供の方法を原則として店舗における対面によるものに限るべきであるとか,郵便等販売を規制すべきであるとの趣旨を明確に示すものは存在しない
・検討部会における議論及びその成果である検討部会報告書並びにこれらを踏まえた新薬事法に係る法案の国会審議等において,郵便等販売の安全性に懐疑的な意見が多く出されたのは上記事実関係等のとおりであるが,それにもかかわらず郵便等販売に対する新薬事法の立場は上記のように不分明であり,その理由が立法過程での議論を含む上記事実関係等からも全くうかがわれないことからすれば,そもそも国会が新薬事法を可決するに際して第一類医薬品及び第二類医薬品に係る郵便等販売を禁止すべきであるとの意思を有していたとはいい難い
としたうえで、「そうすると,新薬事法の授権の趣旨が,第一類医薬品及び第二類医薬品に係る郵便等販売を一律に禁止する旨の省令の制定までをも委任するものとして,上記規制の範囲や程度等に応じて明確であると解するのは困難であるというべきである。したがって,新施行規則のうち,店舗販売業者に対し,一般用医薬品のうち第一類医薬品及び第二類医薬品について,@ 当該店舗において対面で販売させ又は授与させなければならない(159条の14第1項,2項本文)ものとし,A 当該店舗内の情報提供を行う場所において情報の提供を対面により行わせなければならない(159条の15第1項1号,159条の17第1号,2号)ものとし,B郵便等販売をしてはならない(142条,15条の4第1項1号)ものとした各規定は,いずれも上記各医薬品に係る郵便等販売を一律に禁止することとなる限度において,新薬事法の趣旨に適合するものではなく,新薬事法の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効というべきである。」としました。

この判決の結果、省令の上記各条項は違法無効とされましたので、医薬品ネット販売規制は事実上なくなることとなります。厳密に言えば、判決の効力は当事者間においてのみ及ぶので、第三者との関係では各条項は廃止されない限り一応有効に存在することになりますが、再び同様に訴訟で争われた場合には同様の結果となりますので、事実上第三者との関係でも規制が撤廃され、医薬品ネット販売が解禁されたといってよいということになります。厚生労働省も速やかに違法無効とされた上記各条項を削除することになると思われます。


posted by kinyu-bengoshi at 15:34| 日記
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