2013年01月09日

緊急経済対策・劣後ローン官民ファンド

「官民基金 成長戦略の柱 緊急経済対策 規模20兆円超」(日本経済新聞2013.1.8)
「景気底上げ 即効性重視 補正13兆円 国債5兆円増発 相次ぎ官民基金 投資の呼び水に」(日本経済新聞2013.1.8)

政府が7日、緊急経済対策の概要を固め、公共事業の上積みのほかに民間企業の投融資の呼び水となる官民ファンドを相次ぎ創設するとのことです。今年度補正予算案に10.3兆円の国費を計上し、地方や民間企業の負担を合わせた事業規模は20兆円超に上る見通しのようです。
具体的な官民ファンドとしては、国際協力銀行を中心に日本企業による海外進出を支援する官民ファンド(同行の出資枠2000億円)、不動産の省エネ・耐震化を促す官民ファンドなどが挙げられており、さらに中小企業金融円滑化法が3月末に期限切れを迎えるのをにらみ日本政策金融公庫が劣後ローンを中小・零細企業に供給する枠組みも新設するとしています。
記事は、これらの官民ファンドの共通点としては、銀行など民間の機関投資家と連携する点と通常の融資より返済順位の低い出資金や劣後ローンという形をとる点であり、万一官民ファンドが支援した事業が失敗した場合には民間融資は公的資金の出資金より優先して返済を受けられ融資の焦げ付きを避けられ、公的資金がより高いリスクを担うことで民間が投融資に積極的になるよう背中を押す狙いがあると指摘しています。


まず、緊急経済対策とは何かですが、これまでも何度も時の政権が経済建て直しや景気回復を図るために策定、実施されてきたもので、時々により総合経済対策などと命名される場合もありますが、骨格はどれも同じです。具体的には、法律(制定や改正)、予算(公共事業、補助金)、税制、財政投融資などの各政策をパッケージにしたものを言います。各省庁がこれらの政策ツールごとに具体的施策を立案して対策に盛り込み、最終的に閣議決定されます。そのうえで、国会による立法措置、予算措置、税制改正措置や財政投融資などがそれぞれ具体化して実行されることになります。

ここで取り上げる官民ファンドとは、財政投融資を活用した施策となります。財政投融資とは、小泉改革前までは郵便貯金資金等を原資とする旧大蔵省資金運用部の預託金やNTT株売却資金等を原資とする産業投資特別会計の資金等を各種施策実行機関(いわゆる財投機関と呼ばれる特殊法人)に対するファイナンスの形で資金供給する仕組みでした(ファイナンスとは、出資や融資など一応償還を予定するものをいい、償還不要の補助金に対する概念です)。ところが、これら財投機関の投融資の焦げ付きによる損失の発生やそもそもの財政投融資の仕組みの非効率性などが問題となり、小泉改革により従来の仕組みは廃止されました。もっとも、現在は旧大蔵省資金運用部に代わる財政融資資金特別会計が財投債(国債の一種)を市場発行して資金調達し、それを事実上の財投機関として存続している各機関(公団、公庫等)に対するファイナンスの形で資金供給するというスキームに変更して、規模は相当縮小しながらも事実上存続しているといえます(郵便貯金や財政投融資については、当ニュース解説・コラムのゆうちょ銀行の企業融資も適宜ご参照ください)。
過去、財政投融資資金を投じた多くのプロジェクトが失敗したのは、簡単にいえば、国営ゆえの採算度外視やあいまいな経営責任などにあったといえます。競争原理にさらされながら利益獲得を目的として存在する民間企業と異なり、国営企業・事業がかなりの確率で失敗することは財政投融資に限らず歴史が証明しているといえます。

今回の官民ファンドは、過去の財政投融資と異なり民間資金との共同拠出を前提とするところが異なるといえます。もっとも、過去にも似たようなスキームとして官民共同出資の第三セクターというものが大量に設立されましたが、ことごとく失敗して巨額の損失(最終的に国民負担)に帰したことは記憶に新しいところです。
今回の官民ファンドは、公的資金が民間資金に劣後するところが特徴のようですので、過去の三セク以上にモラルハザードの構造を内包しているといえます。
また、日本政策金融公庫による劣後ローン供給制度は設計を誤ると単なる民間金融機関の不良債権の公的資金への付け替えになりかねず、金融円滑化法どころの効果・影響ではなくなる可能性もあります。

現在の日本はカネ余りで資金自体が不足しているわけではないので、安易にしかも劣後資金のバラマキのように公的資金を投じるのではなく、すでに存在する資金をいかに成長に結びつけるかに知恵を絞るべきかと思われます(ずっと以前から同じことが言われていますが)。
posted by kinyu-bengoshi at 23:43| 日記
リンク集