2012年12月18日

落選大臣による閣議

「閣議「お通夜のよう」 首相陳謝「大変申し訳ない」 「独りよがり」文科相は恨み節」(日本経済新聞2012.12.12)

野田佳彦首相は18日閣議を開きました。閣議後の閣僚懇談会で、衆院選で現職閣僚8人が落選するなど与党が惨敗した結果について「責任を感じる。本当にご迷惑をおかけした。閣僚の皆さんには本当に頑張ってもらった。大変申し訳ありませんでした」と陳謝したとのことです。そして、各閣僚の記者会見では落選した閣僚から首相が年内解散に踏み切った判断への恨み節も漏れたようです。


あまり気にもしないかもしれませんが、衆議院総選挙で落選した国会議員でもない人が現職の閣僚として閣議をやっていることはどう整理すればよいでしょうか。
まず前提として、国会議員の地位は、衆院選で落選したことにより失われるのではなく、先行する衆議院解散によりその時点で当然に失われます(憲法45条但書)。したがって、11月16日の衆議院解散以降は、野田首相以下全閣僚は国会議員でなくなり、内閣はそういう非国会議員により構成されていたことになります。
他方、内閣総理大臣は、国会議員の中から指名・任命されることとされており(同法67条、6条1項)、非国会議員の内閣総理大臣は許されないようにも理屈上見えます。この点については、衆議院解散があったときには内閣総理大臣も当然に国会議員の地位を失うが、それにより内閣総理大臣の資格を失うことにならないのは当然のことであると解されています。
次に、他の閣僚(国務大臣)についてですが、内閣総理大臣と異なり国会議員であることは資格要件とはなっていません。民間出身の閣僚もこれまで多く存在しています。もっとも、国務大臣の過半数は、国会議員の中から選ばれなければならないとされています(同法68条1項)。この点についても、衆議院解散の結果大部分の大臣が国会議員の地位を失った場合は憲法自体の予期するところであり、この場合は過半数の要件は適用されないものと解されています。
したがって、首相以下全閣僚が非国会議員である内閣でも問題ないことになります。

では、新政権への移行手続はどうなっているのでしょうか。
まず、衆議院が解散されたときは、解散の日から40日以内に衆議院総選挙を行い、その選挙の日から30日以内に国会を召集しなければならないとされています(同法54条1項)。この国会を特別国会といいます。この特別国会では、内閣総理大臣の指名議決(首班指名)が他のすべての案件に先立って行われます(同法67条1項)。
そして、この特別国会の召集があったときは、内閣は総辞職をしなければなりません(同法70条後段)。
そうすると、特別国会召集の日から特別国会での首班指名、天皇による内閣総理大臣の任命、内閣総理大臣による組閣までの間、内閣が存在しないことになりそうです。この点については、総辞職した内閣は、新たに内閣総理大臣が任命されるまで引き続きその職務を行うこととなっています(同法71条)。
さらに細かく考えると、総辞職した内閣が引き続き職務を行うのは内閣総理大臣任命までの間ですから、任命から組閣までの間は内閣総理大臣以外の国務大臣が存在せず、内閣は内閣総理大臣1名だけということになります。こうした事態を避けるため、国会による首班指名がなされると、天皇による内閣総理大臣任命の前に総理大臣が国務大臣の選定を行い、総理大臣の任命、国務大臣の任命(同法68条1項)、認証(同法7条5号)を同時に行う慣行となっています。

なお、内閣総理大臣の衆議院解散権の根拠などについて、以前本ニュース解説・コラムの衆議院解散・総選挙でも触れましたので、適宜ご参照いただければと思います。
posted by kinyu-bengoshi at 22:55| 日記
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