2012年12月01日

上場企業の私的整理

「中山製鋼、私的整理へ 三菱UFJなど 600億円債権放棄 新日鉄住金に支援要請」(日本経済新聞2012.11.29)
「中山製鋼株 一時50%高 「私的整理で再建」好感(日本経済新聞2012.11.29)
「病院など年内に売却 中山製鋼、本業に資源集中」(日本経済新聞2012.11.30)

東証一部上場の中堅鉄鋼メーカーの中山製鋼所が600億円の債権放棄を伴う私的整理により再建する方針を固めたとのことです。
2012/3期まで3期連続で最終赤字を計上しており、高炉閉鎖や製品集約、人員削減などを進めてきたが、電力料金の値上げなど経営環境が厳しくなっていたようです。なお、同社IR資料によれば、これまでも金融機関からの借入金元本返済猶予の支援を受けていたようです。
再建スキームの骨格は、非主力事業・遊休資産の売却と本業回帰、主力行の債権放棄、企業再生支援機構による下位行債権の買い取り、筆頭株主であるスポンサー新日鉄住金による増資引き受け、といったところのようです。
さらに、同社の11/30付プレスリリースによれば、同社のアモルファス事業を新設分割により切り離し、いわゆる官民ファンドである産業革新機構がその受け皿会社に出資をするようです。


上記報道を見る限りでは、同社の私的整理スキームはまさにフルラインの支援を総動員したもので、私的整理の教科書のようなスキームのように見受けられます。
その中でも注目されるのは、企業再生支援機構と産業革新機構の両政府系機構が関与しているところです(企業再生支援機構については【金融円滑化法】企業再生支援機構を適宜ご参照ください)。両機構の役割分担の1つのあり方を示しているともいえ、本件でうまくいけば今後同様のスキームが活用されるかもしれません。

なお、上記報道により同社の株価が一時50%高まで値上がりしたようです。
債権放棄を伴う私的整理スキームをとる場合、株主責任の明確化のため100%減資されるのが原則といえ、そうすると株価は下落するのが普通なのですが、全く逆の動きをしたことになります。
しかしこれはさほど驚くべきことでもなく、これまで多くの上場企業の私的整理スキームで100%減資がなされてこなかったことから、株式市場もそのように織り込んでいるのだと思います(100%減資の手続きについては弊事務所HPのQ&A 金融機関取引の基本 事業再生・倒産編Q4を適宜ご参照ください)。
個人的には、巨額の債権放棄あり、リストラありの様々なステークホルダーに痛みを強いる私的整理において、真っ先に責任(ここでの責任とは経営責任というよりは損失の負担を意味します)を問われるべき地位にあるといえる既存株主が実質的に全く責任を負わないという形はいかがなものかというところもあるのですが、どうもこれまでの上場企業の私的整理では株主が100%減資で責任をとることのほうがむしろ例外の部類に入るようです(このあたりの実情や事業再生(私的整理・私的再生)のポイント等については弊事務所HPの事業再生Q&A 金融機関取引の基本 事業再生・倒産編を適宜ご参照いただければと思います)。
2012/9期末時点で資産超過(実態BSはそうではないのかもしれません)であることも一因なのかもしれませんが、だとすると債権放棄の必要性をどのように説明するのかも関心のあるところです。
posted by kinyu-bengoshi at 01:25| 日記
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