2012年11月26日

被災宅地の抵当権抹消

「被災宅地の抵当権抹消 宮城の地銀、住宅ローン完済前に」(日本経済新聞2012.11.26)
「被災宅地の移転促進 民間銀、抵当外す案 自治体に売却、高台へ」(日本経済新聞2012.10.13)

宮城県最大手の地方銀行である七十七銀行が、被災地の集団移転事業に協力するため、自治体が買い上げる被災宅地に設定している住宅ローンの抵当権をローン完済前に抹消するとのことです。具体的には、自治体から土地買い上げ代金を受け取るのと引き換えに抵当権抹消書類を自治体に渡し、残ローンは私的整理による減免や新たな宅地への付け替えなどで対応するようです。同行のほか、福島県の東邦銀行や仙台銀行も同様の方式を使う方向のようです。


抵当権は、その性質として不可分性というものがあります。
すなわち、抵当権が担保する貸付債権(被担保債権といいます)の全部の弁済を受けるまでは、抵当不動産の全部についてその権利を行使することができるというものです(民法372条、296条)。
例えば、当初1億円の宅地取得のため1億円の抵当権を設定して銀行から住宅ローンを借り、その後何年かかけて8000万円を返済し、残ローン2000万円になったとしても、銀行は抵当不動産全体に対して抵当権を行使することができる(宅地価格が1億円だとした場合、2000万円の回収のために1億円の宅地全体を競売にかけることができる)ことになります(抵当権の実行手続き等については弊事務所HPのQ&A 金融機関取引の基本 担保編Q1など適宜ご参照ください)。
したがって、抵当権者としては本来、たとえ残ローン残高が少なくなっていたとしても抵当権を抹消する義務も必要もなく、むしろ債権回収の観点からは抹消しないことが通常の対応といえます。
しかし、このような平時の対応では、銀行が抵当権を外さない以上は自治体による被災宅地の買い上げが進まず、高台移転が滞るボトルネック要因とも指摘されていました。

10月13日にも日経新聞で本件スキーム案が報じられ注目していましたが、被災地の金融機関が足並みをそろえた形で非常時の特例的措置としてこのような柔軟な対応をすることは、意義が大きいといえます。
このような金融的な取り組みを契機に高台移転が進み、震災復興の後押しとなることが期待されます。
posted by kinyu-bengoshi at 23:37| 日記
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