2012年11月25日

人民元デリバティブ

「人民元建て為替商品 三井住友銀、決済増に対応」(日本経済新聞2012.11.25)

三井住友銀行が人民元建ての為替デリバティブや為替予約の取り扱いを始めるとのことです。人民元建ての貿易決済の増加に対応し、中国向け輸出入を手掛ける中堅中小企業が相場変動に伴う為替リスクを軽減できるようにするとのことで、年明け以降に実際の受け渡しを始めるようです


記事によれば、同行が取り扱いを始めるのは、人民元建てのいわゆる為替先物予約と通貨オプションのようです。
前者は企業の実需にあう量や期間で取引をすれば、為替変動リスクヘッジ効果を生じるといえます。
後者の通貨オプションについては注意が必要です。
昨今訴訟や金融ADR等で紛争化して大きな問題となっている為替デリバティブは、主に通貨オプションの形態をとり、リスクヘッジをうたいながら実際は丁半ばくちにようなハイリスクな取引になっていたものです(紛争の実態については、弊事務所HPの為替デリバティブを適宜ご参照ください)。

通貨オプションが、あくまで企業の実需に合わせた形で取引される分(例えば、人民元建て輸入企業においては円安リスクヘッジのための人民元コールオプションの買い、同輸出企業においては円高リスクヘッジのための人民元プットオプションの買い)には為替リスクヘッジ効果を発揮するといえます。そのかわり、その対価として相当のオプション料の負担も避けられません。
このオプション料がゼロであるとか、権利行使価格が極端に有利(例えば、スポットレートが1人民元=14円のときに、1人民元=10円で決済できる人民元コールオプション)だとして勧誘された場合には注意が必要です。
オプション料ゼロ(ゼロコストオプションと言います)にしたり権利行使価格を見た目有利にするために、プットオプションの売りを組み合わせたり、決済期間が長期間(長いものだと5年から10年)にわたるものとされることが通常です。
プットオプションの売りはいわゆる損失無限大と呼ばれるハイリスクなポジションですし、長期継続的に拘束される取引は中途解約に伴う解約清算金(損害金)が莫大なものとなるリスクがあります(これらの通貨オプション取引(クーポンスワップも同様)の仕組みやリスクについての詳しい説明は弊事務所HPのQ&A 金融機関取引の基本 デリバティブ編Q2を適宜ご参照ください)。
上記のような為替デリバティブがこれだけ大きな問題となっている中であえて取引した場合には、導入した企業の側にも相応の責任があるとして、後に紛争化した場合に過失を問われかねないともいえます。

同行の公式発表を待つ必要がありますが、上記のような為替デリバティブが大きな問題となっている中で再び同じ仕組みやリスクの商品を取り扱うということはないと思われますが、本件記事ではそのあたりについて触れられていないので、念のためここで指摘しておきます。
posted by kinyu-bengoshi at 12:11| 日記
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