2012年11月22日

中小企業専業銀行・スコアリング融資

「トップ交代 都政漂流 新銀行東京、中小支援の理念遠く」(日本経済新聞2012.11.17)

東京都が筆頭株主の新銀行東京が16日、2012年4〜9月期決算を発表したとのことです。
預貸金利ざやの改善や社債など有価証券売却益の拡大、人件費の削減などにより実質業務純益が12億円と前年同期比2.9倍に増加したようです。純利益は貸倒引当金繰り入れなどにより7%減となったようです。


新銀行東京は2005年に都が1000億円を出資し、中小企業支援を専業とする官製銀行として開業しました。
しかし貸出残高の伸び悩みや不良債権の増加により開業当初から赤字が続き、2008/3末時点で純資産165億円まで落ち込んでいました。
そこで同年都が400億円を追加出資し、都主導で経営再建に取り組んでいます。

多くの金融関係者は、開業当初からこのような展開を予想できていたといえます。
まず、銀行業は薄利多売かつ装置産業の側面もありますから、一定の規模がどうしても必要です。わずか出資金1000億円でゼロから銀行を作るのはそもそも無理があったといえます。
また、同行はスコアリングモデルという融資手法を採用していましたが、これが不良債権の増加を招いたとされています。
スコアリングモデルとは簡単に言えば、企業の財務データを一定のモデルに入力して、企業の信用力を判定し融資を行うというものです。企業融資のノウハウがなくても誰でも融資をすることができ、ローコストで運営できるというのが売りでした。
同行がどのような財務データをベースとしていたのかはわかりませんが、中小企業の表面的な財務データをそのまま入力して判定していたのではお話になりません。
仮に実態に合わせた財務データをベースとしていたのだとしても、景気や経済は生き物ですから、過去の実績を示す財務データだけを見て企業の信用力を判断することはできません。
企業融資に奇策はなく、やはり融資担当者が財務データの精査はもちろんのこと、企業経営者や担当者との接触を通じて地道に実態を把握し、それを上司や審査セクションがチェックするという作業が必要となります。
メガバンクも一部でスコアリングモデルを採用した融資を展開しましたが、今はあまり聞きません。
なお、新銀行東京と同時期に開業し、同様にスコアリングモデルを採用していた日本振興銀行は2010年に経営破たんしました。
さらに、両行は開業した時期も悪かったといえます。両行は中小企業の貸し渋り、貸し剥がし対策を目的としましたが、開業した2004年、2005年は景気がよく、貸し渋りどころかメガバンクをはじめ多くの金融機関が中小企業向け融資を争って拡大していた時期だったので、スタートから激しい競争にさらされ、思うように貸出残高が伸びなかったのだと思われます。

都の追加出資以降は、いわば縮小均衡路線の再建計画で2010/3期以降単年度黒字を維持しているようです。
しかし、2012/9中間決算によれば、総資産3,803億円で、うち政府向け貸出金を除く与信残高1,304億円(うち中小企業向け861億円)、有価証券2,067億円となっています。
総資産規模も小さすぎますし、資産の内訳で見ても本業の与信残高が4割(うち中小企業向けが2割強)にとどまっているということで、その存在意義が問われているのもやむを得ないといえます。
不良債権比率も11%と依然高水準です。
有価証券については、うち国債951億円、社債909億円となっています。
国債の総資産に占める割合は25%と高く、中小企業向け与信残高を上回るような状況となっています。
また、社債残高の大きさが目立ちます。これが中小企業の発行する私募債等の債券であればリスクマネー供給の役割を果たしているといえるのですが、そうでなく単なる大企業発行社債向け投資であれば、これも中小企業向け与信残高を上回っています。
以上のような実態から、中小企業支援という理念さえも失われているのではないかと指摘されているところです。

同行については来月の都知事選の争点にもなりそうですので、今後注目してみたいと思います。
posted by kinyu-bengoshi at 15:09| 日記
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