2012年11月19日

事業承継・経営承継

「M&A・外部人材 事業承継に活用 後継者不足に悩む中小 「団塊」の経営者 引退近づく」(日本経済新聞2012.11.19)

中小企業の事業承継手法が多様化しているとのことです。親族に継がせるだけでなく、M&A仲介サービスを利用して他社に経営を委ねたり、外部の人材を登用する例が増えているようです。
記事によれば、帝国データバンクの調べでは全国の年商100億円未満の39万7千社のうち後継者不在の企業は26万5千社と約67%にのぼるようです。さらに今年から団塊の世代が65歳に達し始め、引退する創業者が急増するとの指摘もあるようです。
また、親族外承継の場合、後継社長の個人保証負担がネックになっているとのことです。


事業承継・経営承継とよく言われておりますが、事業承継や経営承継という特別の法律上の手続きがあるわけではありません。
あくまで一般的な資産や事業の移転の手続きを利用して、事業や経営の円滑な承継を目指すものです。
承継の手法としては、大きく、株式譲渡、事業譲渡、会社分割があります。

株式は相続財産(民法896条本文)として相続の対象となるので、放置したまま経営者株主が死亡すると法定相続分で相続され、各共同相続人で共有されることになります。
共有となった株式は、権利行使者1人を定めて会社に対して通知をしなければ株主権行使ができないなどの不都合があり(会社法106条)、経営の不安定要因となりえます。
このような株式の分散を防ぎ、あらかじめ定めた後継者に株式を集中させるため、売買や生前贈与による株式譲渡のほか、遺贈、死因贈与、相続させる遺言などが活用されます。

株式譲渡は、経営者が保有する会社株式を後継者に売却や贈与により譲渡するというものです。法的には単なる売買(民法555条)や贈与(同法549条)です。
もっとも、会社法上の非公開会社(全株式につき譲渡制限が付されている会社。会社法2条5号参照)の場合は株式譲渡につき株主総会(取締役会設置会社は取締役会)の決議による承認が必要となります(会社法139条1項)。
株主において譲渡所得税や贈与税などの課税が発生します。

贈与、遺贈、遺言の場合は、遺留分権者の遺留分を侵害したときは遺留分減殺請求を受けますので、そのことを念頭に置きながら対策を講じる必要があります。
なお、平成20年5月に成立し同年10月1日から施行されている「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(経営承継円滑化法)」により、一定の要件を充たす後継者が経済産業大臣の確認及び家庭裁判所の許可を受ける等により、承継株式を遺留分算定の基礎に算入しないという遺留分に関する特例を受けられる場合があります。
また、相続税・贈与税について、上記経営承継円滑化法により納税の猶予が認められる場合があります。

事業譲渡は、「一定の営業目的のため組織化され、有機的一体として機能する財産(得意先関係等の経済的価値のある事実関係を含む。)の全部または重要な一部を譲渡し、これによって、譲渡会社がその財産によって営んでいた営利的活動の全部または重要な一部を譲受人に受け継がせ、譲渡会社がその譲渡の限度に応じ法律上当然に同法25条(筆者注:現会社法21条)に定める競業避止義務を負う結果を伴うもの」(最高裁昭和40年9月22日判決)です。
後継社長が個人のまま事業譲渡を受けることは考えにくいので、後継社長が自力で資金調達するかバイアウトファンドなどの金融スポンサーと共同で受け皿となる会社を設立して、そこで事業を譲り受けるという形になります。
事業譲渡の手続きや注意点等については、弊事務所HPのQ&A 金融機関取引の基本 事業再生・倒産編Q3を適宜ご参照ください。

会社分割は、吸収分割と新設分割があります。
吸収分割とは、株式会社又は合同会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を分割後他の会社に承継させることをいいます(会社法2条29号)。
新設分割とは、1又は2以上の株式会社又は合同会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を分割により設立する会社に承継させることをいいます(同法2条30号)。
事業譲渡と同様、後継社長が自力で資金調達するかバイアウトファンドなどの金融スポンサーと共同で受け皿となる会社を設立することになります。
会社分割の手続きや注意点等については、弊事務所HPのQ&A 金融機関取引の基本 事業再生・倒産編Q1Q2を適宜ご参照ください。
なお、先日、詐害的な会社分割を取り消すことを認めた最高裁判例(最高裁平成24年10月12日判決)が出ました。Q2にて判決の紹介と簡単なコメントを記載しておりますので適宜ご参照ください。

最後に、本件記事も指摘する通り、個人保証の問題があります。
この点については弊事務所HPのQ&A 金融機関取引の基本 保証編Q7にて記載しておりますので、適宜ご参照ください。
posted by kinyu-bengoshi at 21:30| 日記
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