2012年11月15日

衆議院解散・総選挙

「衆院選 来月16日 あす解散、4日に公示 党首討論 首相、異例の解散日明言」(日本経済新聞2012.11.15)

野田佳彦首相が14日の党首討論で、16日に衆院解散に踏み切る考えを表明しました。
ちなみに、以前本ニュース解説・コラムでは衆議院解散請求1衆議院解散請求2衆議院解散請求3において別の切り口から検討していましたので、適宜ご参照いただければと思います。

衆議院の解散権は内閣総理大臣の専権事項である、ということが当たり前のように言われていますが、その根拠はどこにあるのでしょうか。

まず、憲法上、内閣総理大臣が衆議院を解散するなどという規定はありません。
衆議院の解散は天皇の国事行為とされていて、解散の主体は形式的にはあくまで天皇です(憲法7条3号)。
そして、天皇の国事行為は、内閣の助言と承認により行われます(同法7条柱書)。
この規定から、衆議院の解散権は実質的には内閣にあるといわれています。
しかし、内閣とは、その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣で組織される合議体であり(同法66条1項)、当然ながら内閣総理大臣そのものではありません。
内閣の意思決定は閣議により決せられます(内閣法4条1項)。
そして、慣例上、閣議決定は全員一致で行われます。
したがって、衆議院解散を決するためには、閣僚全員の一致による閣議決定が必要となります。
もっとも、内閣総理大臣は、任意に閣僚を罷免することができます(同法2項)。
したがって、内閣総理大臣は、閣議で閣僚が解散に反対したときはただちにその閣僚を罷免することができ、それにより全員一致の閣議決定を実現することができます(以前小泉元首相は郵政解散を閣議にかけた際、反対した閣僚を罷免して自らがその職務を兼務して全員一致の閣議決定をしました)。
すなわち、極端な場合、自分以外の閣僚全員が解散に反対したとしても、総理大臣は一人で解散を閣議決定できることになります。
このことをもって、衆議院の解散権は内閣総理大臣の専権事項である、と言われているのです。

では、内閣総理大臣が衆議院を解散するのはどういう場合でしょうか。

まず憲法上、「内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。」(同法69条)とされています。
つまり、衆議院で内閣不信任決議案が可決(ないし信任決議案が否決)されたときは、内閣は10日以内に衆議院解散をするか総辞職をしなければなりません。
内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で指名されます(同法67条1項)。この国会の議決とは、衆議院、参議院のそれぞれで行われます。議決要件は両議院において出席議員の過半数です(同法56条2項)。内閣総理大臣の指名については衆議院の議決が優先するので(同法67条2項)、衆参ねじれた状況でも結局は衆議院の議決により決せられることになります。
したがって、衆議院の過半数を占める議員勢力が内閣総理大臣を指名することができ、すなわち政権与党となります。
内閣総理大臣は、国会の指名に基づいて天皇から総理大臣に任命され(同法6条1項)、国務大臣を任命して(同法68条1項)、内閣を組織(組閣)します。
以上の通り、全国民から選挙されて全国民を代表する国会議員(衆議院議員)(同法43条)の過半数が内閣総理大臣を指名し、内閣が組織されるという関係になります(これを議院内閣制といいます)。
したがって、内閣の存立基盤は国会(衆議院)の信任に基づいており、それはひいては全国民からの信任ということになります。その衆議院から不信任決議を突き付けられた場合には、もはや内閣の存立基盤が失われたといえるので、総辞職をするか、衆議院を解散して国民の信を問い直すということになるのです。

しかし今回は内閣不信任決議案が可決されたわけではありません。
その場合でも、上記の憲法7条3号を根拠に、内閣総理大臣(厳密には内閣であり、形式的には天皇)はいつでも衆議院を解散することができる、と考えられています。
内閣不信任決議案を可決されない限り、内閣総理大臣は任期満了までその座に居座ることができますが、それでもあえて衆議院を解散しようとするのはなぜでしょうか。
ひとつあるのは、任期満了が近づく中で内閣支持率が下落し続けている場合です。その劣勢のまま任期満了選挙に追い込まれれば、政権与党が大敗する確率が高いので、その前に時期において少しでも主導権を握った形で解散に打って出るというものです。今回の解散や3年前の政権交代となった解散はこれにあたるといえます。
これとは逆に、内閣が衆議院の意思と国民の意思がかい離していると判断する場合に、民意を問うて衆議院を再構成し、政権基盤の強化を図るために解散に打って出るという形もあります。小泉元首相はその政治生命をかけた郵政改革法案が参議院で自党議院の造反にあって否決されたとき、すかさず衆議院解散をしました。そこで自民党が国民の圧倒的な支持を受けて圧勝して自公両党で3分の2以上の議席を獲得し、その民意を背景に同法案を可決させました。

いずれにしても、衆議院の解散総選挙は、国民が政治家を審判して、ひいては国政を委ねる内閣総理大臣を決める唯一の機会ですので、多くの国民が参加してその意思を反映させることが重要になってきます。
もっとも、現在衆参両議院とも、最高裁判所によりその定数配分が選挙区により不平等で違憲状態であるとされ、民意を十分に反映されない仕組みであるとされています。今回の衆議院総選挙はこうした違憲状態下で行われるもので、間違いなく選挙無効訴訟が提起されますので、その訴訟にも注目です。
posted by kinyu-bengoshi at 17:52| 日記
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