2012年11月03日

厚生年金基金(企業年金)3-脱退

「厚年基金 深まる苦境 脱退の動き加速へ 「財政難」理由 認める判決」(日本経済新聞2012.8.25)

少し前の記事になりますが、長野地裁が8月24日、財政が悪化した厚生年金基金からの脱退を巡る訴訟で、長野県の建設会社の脱退を認める判決を出したというものです。
記事は、「脱退の自由」が認められたことで、財政難に陥った多くの基金で同様の動きが広がる可能性があり、そうなると基金の財政は一段と悪化する懸念がある、としています。
厚生年金基金(企業年金)1及び2では、基金の解散について触れましたが、ここでは、母体企業の基金からの脱退について触れてみます。

本件訴訟における長野県の厚生年金基金とは、AIJ投資顧問による詐欺的被害やずさんな未公開株運用等により巨額の運用損失を出し、さらに事務長が巨額の横領をして海外に逃亡したなどとされる長野県建設業厚生年金基金であり、母体企業が脱退を主張して同基金の代議員会議決の無効確認を請求する形で裁判で争われたものです。
事案の概要は、母体企業の1社が同基金に対して任意脱退を申し出て、基金から特別掛金の納入告知を受けたので同掛金の納入の準備もしていたところ、同基金から先に代議員会の議決が必要であったとして同掛金の納入留保を依頼されたので納入を留保していたら、同基金から、脱退は規約の変更に該当し代議員会の3分の2以上の多数による議決が必要であるが、不承認との議決結果となったとの通知がなされたことから、上記の請求をして訴訟提起したというものです。
裁判所は、「やむを得ない事由」がある場合には、基金は任意脱退を制限することは許されず、この場合には、母体企業の任意脱退自体には代議員会の議決又は承認は不要である、という判断基準を示し、事案へのあてはめでもかかる「やむを得ない事由」があるとして、結論として原告企業の請求を認めました。
厚生年金基金からの母体企業の任意の脱退について、基金の規約上は代議員会の3分の2以上の多数による議決が必要であるとしながら、「やむを得ない事由」があればかかる議決なしで脱退できるとした注目すべき判決です。
ただ、1つ留意すべきは、本件訴訟事案の原告企業は特別掛金の一括納付をすることができた状態であったという事実です。
特別掛金の一括納付ができない場合は、本判決の「やむを得ない事由」以前に法律上そもそも任意の脱退はできないものと考えられます(厚生年金保険法138条6項)。
本判決のより詳しい内容や脱退に伴う特別掛金の会計処理や資金調達、金融検査マニュアル上の取り扱いなど金融機関との関係等については、弊事務所HPのQ&A 金融機関取引の基本 事業再生・倒産編Q8にて紹介・説明しておりますので、適宜ご参照ください。
posted by kinyu-bengoshi at 20:10| 日記
リンク集