2012年10月30日

厚生年金基金(企業年金)1-改革案

「厚年基金 10年で廃止 損失、保険料で穴埋め 厚労省案」(日本経済新聞2012.10.28)

厚生労働省が廃止の検討を始めた厚生年金基金制度の改革案の骨格が明らかになったとのことです。
報道によれば、その内容は概略、
・改革法施行から10年で制度廃止
・廃止までの間、厚生年金基金は解散や他の企業年金制度へ移行
・加入企業が払いきれない積立不足額は、厚生年金保険料で穴埋め
・国から預かっている代行部分の返還額を減額
・加入企業の連帯債務の廃止
というもののようです。

厚生年金基金については、今年初めに発覚したAIJ投資顧問による年金消失事件により巨額の運用損失を被ったことで注目を集めましたが、このことは1つのきっかけにすぎなかったといえます。
すなわち、少子高齢化の進行による負担と受給のミスマッチの拡大という構造の中、長引く株式市場の低迷による運用難により基金の財政悪化が深刻化していました。こうした基金が高いリターンを求めてAIJ投資顧問などに対するハイリスク投資に傾いていったところ、ハイリスクどころか詐欺的被害にあったというものです。
負担と受給のミスマッチについては、下図をご参照ください。
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(厚生労働省HPのデータをもとに集計・加工)

そして、純資産額が最低責任準備金に不足(積立不足)するいわゆる「代行割れ」についても、2011年度末時点で全576基金のうち286基金が代行割れとなり、その代行割れ総額は約1兆1100億円となっており、いずれも前年度末から大幅な増加となっています。ちなみに、AIJ被害を受けた81基金については、2011年度末時点でうち62基金が代行割れとなり、その代行割れ総額は約3000億円となっているようです(厚生労働省HP)。
代行割れの基金数と総額の推移については、下図をご参照ください。
daikouware.png
(厚生労働省HPのデータをもとに集計・加工)

このような中で、AIJによる被害を受けた基金に対する当面の対応とともに、厚生年金基金制度自体の改革案が厚生労働省内に設置された「厚生年金基金等の資産運用に関する特別対策本部」(2012.3.14設置)において議論されています(以下、厚生労働省HPより)。
AIJ問題を受けた当面の対応としては、AIJへの投資により生じた積立不足については、掛け金の引き上げ期間を20年から最大30年に延長して、急激な掛け金上昇による母体企業の経営への影響を緩和するとの対応案が示されました(2012.7.26同対策本部第6回)。
制度改革案については、代行制度の一定期間経過後の廃止の方針が示され、連帯債務問題などについても検討することとされました(2012.9.28同対策本部第7回)。
そして今回、上記のような改革案が報道されました。

なお、基金解散に伴う母体企業の会計処理や金融検査マニュアル上の取扱いについても、厚生労働省及び金融庁からそれぞれ公表されており、注意が必要です(厚生労働省HP、金融庁HP)。
今後基金解散が進むとすると、母体企業の積立不足の穴埋めによる損失計上や資金負担が生ずることになり、その程度によっては企業の存続にもかかわり、場合によっては事業再生策を検討する必要が出てくる可能性もあります。このような場合については、弊事務所HPのQ&A 金融機関取引の基本 事業再生・倒産編Q7にて具体的事例に即して取り上げておりますので、適宜ご参照いただければと思います。


posted by kinyu-bengoshi at 23:46| 日記
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