2012年10月28日

衆議院解散請求3

以上の主張を整理してみると、意外と事実レベルでは争いは少なく、争点としては、

1 本件解散合意は、原告の問責賛成(武装解除の解除=再武装)を解除条件としたものであったか(武装解除合意自体は事実として認められるが武装解除の解除(再武装)が解除条件といえるかは評価レベルの問題)
2 本件武装解除合意は、税と社会保障の一体改革関連法案(以下本件法案)成立を解除条件としたものであったか(法案成立合意自体は事実として認められるが法案成立が解除条件といえるかは評価レベルの問題)
3 被告の本件解散合意時の詐欺の故意(事実レベルだが評価的要素が強い問題)
4 TSの本件武装解除合意時の詐欺の故意(事実レベルだが評価的要素が強い問題)
5 「近いうちに」とは具体的にいつまでか(評価レベルの問題)

となると思われます。

以下、各種報道における関係者の言動等からみて事実と認めてもよさそうな間接事実を前提に、まったくの独断と偏見で上記各争点について判決調で検討してみたいと思います。なお、導かれた結論は、筆者の政治的立場を示すものではありません。


主文 原告の請求を棄却する。

理由

1 争点1について
本件解散合意の当時、被告は所属議員の離党問題に悩まされ、9月に代表選も控えていた。TSも9月の総裁選を控え党内から解散要求圧力が強まっていた。被告としては、時間が迫る中で、政治生命をかけるとまで述べた本件法案を通すために原告の協力を取り付けることが必要不可欠であり、TSにとっても被告からの解散確約を得ることが自らの総裁選再選に向けて非常に重要なものとなっていた。そこで両者の利害が一致し、原告が本件法案成立に協力するのと引き換えに、被告は法案成立後近いうちに衆議院を解散するという本件解散合意が成立したと考えるのが自然である。しかし、そこにTSから言い出したとされる本件武装解除合意も加わっている。本来、被告が解散義務を負い、原告が法案賛成義務を負うということで負担のバランスが取れていたはずだが、原告はさらに武装解除義務も負うことになり負担のバランスが微妙にずれている。このような自らにとって不利な合意についてTSが自ら申し出たということは、TSの方が本件解散合意の取り付けを急ぐあまり譲歩したものと考えるのが自然である。
したがって、本件解散合意は、武装解除の解除(問責賛成などの再武装)を解除条件としたものであると認められる。

2 争点2について
次に、本件武装解除合意は、本件法案成立を解除条件としたものであったか。
本件解散合意がなされたのは8月8日であり、同合意とセットとなっていた本件法案成立合意に基づき原告が法案に賛成して本件法案が成立したのは2日後の8月10日である。原告は、本件武装解除合意は本件法案賛成義務の履行を担保するためのものであったと主張するが、本件解散合意及び本件法案成立合意に基づき法案成立を図ることは原告・被告双方にとって利害が一致していたことであり、現に合意からわずか2日後に法案成立している。このような状況下にあって、原告が本件法案成立のためにいったんいわゆる武装解除することは、TSが敢えて言及せずとも当然のことであり、本件武装解除合意が、原告の本件法案賛成義務の履行をわざわざ担保するためのものであったと考えるのは不自然である。むしろ、本件解散合意を急いだTSが過剰な譲歩をした結果なされたものとみるのが自然であり、本件武装解除合意が本件法案成立を解除条件としたものであったとは認められない。そうすると、本件法案成立後はたしていつまで原告は武装解除義務を負うのかという疑問もあるが(下手をすると衆議院議員の任期満了までとなってしまいかねない)、原告が具体的な解散時期の確約を得ないばかりか安易に野党の最大の交渉上の武器である問責決議案の行使を放棄して武装解除するなどと約束し、この武装解除の期限も明確にしなかったという不利な交渉をした結果でありやむを得ない。
以上から、本件武装解除合意は解除条件の成就により効力を失ったということはできず、かえって、本件解散合意は、原告の問責賛成(武装解除の解除=再武装)により解除条件が成就したことにより、その時点で効力を失ったものと解すべきである。
なお、原告は、被告が「来年度の予算編成はやらない」と述べたと主張し、被告もこれを明確に否定しないが、これは本件解散合意における解散時期を明確にする一材料ではあるが、そもそも原告の問責賛成による再武装により本件解散合意の効力が失われた以上、結論を左右するものではない。

3 よって、その余の争点を検討するまでもなく、原告の請求は理由がなく、これを棄却する。


以上によれば、本件解散合意が効力を失った以上、どちらが嘘をついて騙したとか、「近いうちに」は年内までだ、などという話はまったく意味のないことということになります。
無関係な第三者が評論家的・結果論的に述べる形になりますが、やはり、野党が対峙する内閣総理大臣と衆議院解散について合意するということ(話し合い解散)自体がそもそも無理があったといえそうです。
野党が首相に衆議院解散をさせる手段は、憲法上、内閣不信任決議案を可決させることしかないです。
今回それ以外の方法で解散を求めるとしたら、首相が政治生命をかけると表明した税と社会保障の一体改革関連法案に参議院で反対にして廃案に持ち込み、首相が国民に信を問わざるを得ないという形に追い込む方が可能性があったように思われます(郵政解散のパターン)。
自民党も結局首相と同じく同法案を成立させたいという方針だった以上、はじめから勝負は決まっていたともいえそうです。
posted by kinyu-bengoshi at 16:51| 日記
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