2012年10月24日

私的整理ガイドライン

「大震災の被災者 債務整理を加速 減免制度 活用100件に」(日本経済新聞2012.10.23)

東日本大震災で被災した個人債務者の二重ローン問題を解決するためにつくられた「個人版私的整理ガイドライン」に基づく債務整理の成立件数が100件に達したとのことです。
二重ローンとは、震災前に住宅ローンや事業者ローンを抱えていた債務者が、地震や津波で倒壊した建物等を再建するために新たなローンを借りることにより二重にローンを負担することになった状態を言います。
これは、被災者の方々の再建にとって大きな障害となっていたため、二重ローン債務の整理を促進するため官民をあげて平成23年7月に策定されたのが、「個人版私的整理ガイドライン」です。
なお、(企業版)私的整理ガイドラインは、その10年前の平成13年9月にすでに策定されております。
この(企業版)私的整理ガイドラインは、企業の私的整理のための原則(紳士協定的なもので法的強制力はありません)たるもので、米国における私的整理の準則である「INSOL8原則」を参考に、それまで日本にはなかった私的整理の基本的ルールを初めて定めたものです。
銀行の巨額不良債権問題が金融・経済面の最重要課題となる中で、銀行に不良債権処理を促すとともに、企業倒産の増加による混乱を回避すべく、官民をあげて策定されました。
ちなみに、私個人としても、当時できたばかりの民事再生法申立企業を対象とする政策金融機関の事業再生支援融資制度(いわゆる「DIPファイナンス」)の対象企業に私的整理ガイドライン適用企業も新たに追加する制度拡充を予算要求官庁の担当官の立場で関わった縁があります。
(企業版)私的整理ガイドラインは、その要件や手続きの厳格さ等から活用実績はさほど伸びておりませんでした。
個人版私的整理ガイドラインも、これまであまり活用実績が伸びていなかったようです。
(企業版)私的整理ガイドラインは、あくまで銀行不良債権処理の促進の一環として策定された面がありましたので、金融庁による金融検査をテコに銀行側に活用を促すということもできましたが(私的整理ガイドライン自体の活用はさほど増えていませんが、同ガイドラインも踏まえた私的整理を実行する組織として設立された産業再生機構において相応の活用実績が上がりました)、今回の東日本大震災による被災者二重ローン問題は、当時とは背景やニーズが異なるといえ、こうした銀行ルートでの活用増加は期待しにくかったといえそうです。
銀行ルートでの活用増加がないとすれば、債務者側からの自発的な活用が中心となりますが、そのための十分な周知がなされていなかったことがこれまでの活用実績の低迷の原因といえそうです。
私が見る限りでも、個人版私的整理ガイドラインは、(企業版)私的整理ガイドラインに比べ、債務者の要件、手続、弁済計画の内容等が緩和され、保証履行請求や信用情報登録機関への報告・登録の面でも配慮がなされるなど、使い勝手も良くなっているように思います。
今後さらに周知が進み、活用が増えることが期待されます。
なお、(企業版)私的整理ガイドラインについては、弊事務所HPのQ&A 金融機関取引の基本 事業再生・倒産編Q5、個人版私的整理ガイドラインについては、同じくQ&A 金融機関取引の基本 事業再生・倒産編Q6にて詳しく記載しておりますので、適宜ご参照いただければと思います。
posted by kinyu-bengoshi at 22:03| 日記
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