2014年06月17日

官民ファンド向け財務省監査

「産業革新機構、投資先の監査未実施も 改善求める」(日本経済新聞2014.6.16)

(記事引用)
 財務省は16日、産業革新機構の運営体制を調査したと発表した。投資先企業の売り上げが計画を大きく下回っていても、監査を実施していない事例があった。財務省は7月上旬までに改善策を提出するように求める。
 同省が官民ファンドを調べるのは初めて。昨年9月につくった官民ファンドの運用指針を参考に、投資先の決定過程や監査体制を調べた。
 調査によると、革新機構の内部規定は投資先の売り上げが計画より7割下回ると、社内に専門の監査組織を立ち上げて経営状況を細かく把握するよう定めている。しかし実際には組織をつくっていない例があった。
 財務省は革新機構が投資先企業の株式売却を進めていった場合、人員配置の見直しが必要になる可能性も指摘した。投資先の財務状況の改善を助言したり、株式売却を担当したりする人員を増やすように要請した。投資先を収益性や投資目的などの項目で明確に分類することも求めた。
 財務省は農林漁業成長産業化支援機構など他の官民ファンドについても、投資案件が増えるなどで必要と判断した時期に運営体制を調査する方針だ。
(引用終わり)


財務省の公表資料(「財政融資資金等の実地監査について」平成26年6月16日財務省理財局)によれば、財務省は、産業革新機構(2012年度末財投残高2660億円、2012年度経常損失95億円)に対する、官民ファンドとして初の実地監査を行ったとのことです。

同資料において、「改善・検討を求めた主な事項」としていくつかの指摘事項が記載されていますが、特に目を引くのが、

「(国への適時適切な報告態勢)個別支援先の事業化に向けた活動が困難となり、休止する方針を機構が了承した案件について、出資者たる国へ報告を行っていない状況。今後、国からの求めがなくとも適切に報告がなされるよう改善を求める。」

「(モニタリング態勢)支援先の経営状況が内部規程で定める水準まで悪化しているにもかかわらず、組織的な検討がなされていない案件を確認。今後は、EV投資案件やEXITに向かう案件の増加が見込まれるため、新たに開始した戦略的LP投資に対応した見直しを含め、モニタリング態勢の強化を図ること。」

との指摘で、機構が成長革新企業と判断して巨額の実質国費を投じた投資先企業がいつのまにか事業休止していたり、それを国に報告すらしていないなど、驚くべき実態の一端が明らかにされており、勝手に投資リスクを負担させられている国民としては看過できないものといえそうです。

その他の指摘事項も、実質公的資金を預かって適切に運用すべき国の機関として許されないレベルのいい加減さを示しているといえそうです。

最終的な責任を誰がどのように取るのか注目されるところです。
posted by kinyu-bengoshi at 16:55| 日記

2014年06月05日

日本版スーパー・リージョナルバンク

「地銀:再編圧力強まる 全国105行過剰状態」(毎日新聞2014.5.26)

(記事一部引用)
 全国で105行(地銀、第二地銀)がひしめく地域金融機関を巡り、業界再編を促す圧力が強まっている。競争激化で収益が伸び悩んでいることに加え、人口減少や地域経済の縮小に伴い、今後は採算が悪化する恐れがあるためだ。一部地銀で統合などの動きも出ているものの、金融庁内では「動きが鈍い」との不満が根強い。地域金融機関の将来像は見通せないままだ。
 「地域金融機関は利ざやが減り、(金融機関が過剰に存在する)オーバーバンキング」。自民党の塩崎恭久政調会長代理は26日の記者会見で、地域金融の強化が必要との認識を強調した。同党がこの日、政府に示した成長戦略の提言には、広域で事業展開する「日本版スーパー・リージョナルバンク(仮称)」の創設が盛り込まれた。
 地銀、第二地銀の融資業務など本業のもうけを示す「コア業務純益」。金融庁によると、2007年3月期は合計で2兆円超だった。しかし、13年3月期には約4分の3(1兆5400億円)に減った。地元企業の資金需要の伸び悩みや、金融機関同士の金利競争の激化で、利ざやの縮小が続いていることが背景にある。
 金融庁が昨年9月公表した地域金融機関の監督指針には「5〜10年後を見据えた中長期の経営戦略を検討することが重要」と明記され、年明け以降は畑中龍太郎長官が地銀頭取らが集まる会合で「経営戦略に答えを出す年だ」と強調した。足元の景気回復で多くの金融機関で業績が回復しているが、「国内市場の縮小が見込まれる中、地銀再編は不可避」(幹部)として、各行に経営戦略の練り直しを迫っている。
(引用終わり)


公式のプレスリリースが見当たらないので正しいところは分かりませんが、対象地域を異にする複数の地銀が統合して、規模を大きくして複数の地域をカバーする地域銀行の創設を目指すもののように見えます。

現時点でも、持株会社方式で地域を異にする複数の地銀を事実上統合したり、複数の地銀が緩やかな業務提携をするなど、地域の枠を超えた地銀の統合・提携の事例は見られますが、スーパー・リージョナルバンクというのは、それを上回るような規模、エリアのものを言うように受け止められるところ、その行き着く先は結局メガバンクではないか、との指摘もありそうです。

銀行の統合は、これまでもメガバンク、地銀問わず相当数の前例がありますが、役職員の重複ポストの整理とリストラ、店舗の統廃合、システムの統合など難しい課題も少なくないと言えます。

また、銀行統合は、記事も言うとおり、金利競争の回避による利ザヤの改善を目指すものですから、利用者側から見ても、借り手企業にとっては借入金利の上昇、預金者にとっては預金金利の低下、を意味することになり、少なくとも直接的には好ましいこととは言えません。地方の利用者にとっては、店舗の廃止による利便性の低下ということもあります。

デフレ脱却や成長戦略のために異次元の金融緩和を行い、超低金利を維持して企業の設備投資を刺激することが企図されている中で、企業の資金調達金利が上がることになるような銀行統合は、こうした政策と整合しているといえるのか、少なくとも景気回復が確実になってからではないか、これ以上銀行を儲けさせてどうするのか、などといった意見も聞こえそうです。
posted by kinyu-bengoshi at 16:39| 日記
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