2014年05月27日

中小企業の隠れ倒産

「企業の休廃業:中小の“隠れ倒産”10年で倍増」(毎日新聞2014.5.26)

(記事一部引用)
 アベノミクスによる景気回復基調を背景に企業の倒産件数が22年ぶりの低水準となる一方で、企業が余力を残しながら事業を断念し、休廃業するケースが急増している。後継者難や経営の先行き懸念が主因で、東京商工リサーチによると、2013年の休廃業(解散も含む)数は2万8943件で過去10年で2倍に急増した。債務超過などで倒産に至る前に自主的に会社を整理するため、“隠れ倒産”とも呼ばれる休廃業の急増は、景気回復の波に乗り切れない中小零細企業の経営の厳しさを浮き彫りにしている。
(引用終わり)


いわゆる「倒産」とは、法的整理による倒産手続を指して呼ぶことが多く、具体的には、破産、特別清算、民事再生、会社更生の4つの手続があります。このうち、前2者が清算型、後2者が再生型の倒産手続となります。これらの法的倒産は、通常、債務超過の場合に選択されます(法人倒産の場合)。

本記事にいう「隠れ倒産」とは、債務超過ではないものの、先行きの見通しが立たないこと等の理由から事業継続を断念して会社をたたむことを言います。具体的には、解散・清算(通常清算)することになります。

具体的な手続きは、大まかに言うと、株主総会の決議(特別決議)により解散(会社法471条3号、309条2項11号)、清算人の設置(会社法477、478条)、清算人による清算事務(現務の結了、債権の取立て及び債務の弁済、残余財産の分配)(会社法481条)、業務執行(会社法482条)等を経て、清算事務が終了し、清算結了の登記(会社法929条)がなされます。清算会社が債務超過の場合等は、破産や特別清算に移行します(会社法484条、511条)。

また、最後の登記から12年経過した会社(休眠会社)については、法務大臣による職権による手続により解散したものとみなされます(会社法472条)。

解散・清算は、上記のような法的な手続やそれに伴う費用もかかり、そう簡単ではありません。会社を設立するのは割と簡単になっていますが、会社をたたむのは案外手間とコストがかかるといえます。

会社の解散・清算は、会社継続に伴う様々な事務負担やコスト(決算、税務申告、納税、登記等)との兼ね合いで決断されることになるといえます。
posted by kinyu-bengoshi at 17:04| 日記

2014年05月22日

中小企業延命策から新陳代謝へ

「廃業中小の元社員に安全網 財務相、諮問会議で提言へ」(日本経済新聞2014.5.19)

(記事一部引用)
 麻生太郎財務相兼金融担当相は19日夕の経済財政諮問会議で、廃業などで市場から退出した中小企業の元従業員の生活を保障するためのセーフティーネット(安全網)作りを提案する。高齢化などで事業承継が難しく、廃業する企業が増えることを踏まえ、所得保障など生活支援が必要と判断した。
(引用終わり)


5/19開催された経済財政諮問会議の資料によると、

麻生財務大臣兼金融担当大臣提出資料「企業の中長期的な生産性向上〜更なる好循環の促進に向けて〜」では、「地域における企業(ローカル企業群)の活性化」との項目において、「新陳代謝の促進とセーフティネット」の中の具体策として、「退出企業の従業員に対するセーフティーネットの整備」と明記されています。

また、茂木経済産業大臣提出資料「地域の中小企業・小規模事業者の活性化」では、「全国津々浦々で創業のうねりを起こす」との項目において、「新陳代謝を促進」の中の具体策として、「経営者の引退を円滑化−廃業後の「生活資金」を支援する小規模企業共済(123万人が加入)の機能強化・事業承継支援の強化・掛金の範囲内での廃業資金の貸付」と明記されています。

これまでの金融円滑化法にみられるいわゆる延命策をやめ、企業の新陳代謝を促進し、その過程で生じるリストラ等の様々な痛みに対しては別途セーフティネット策を講じる、という政策に舵を切って転換したことを示すものといえます。
posted by kinyu-bengoshi at 16:52| 日記

2014年05月15日

議決権取得型企業再生ファンド

「再生ファンド、議決権だけ集め経営陣と対話」(日本経済新聞2014.5.14)

(記事一部引用)
 独立系の企業再生ファンド、キーストーン・パートナース(東京・文京)は新たなスキームによる企業再生を始めた。信託銀行を介して個人株主など多数の株主の議決権を束ね、発言力を確保する。株式そのものを取得する通常の買収ファンドに比べ、資金負担が軽く会社側の抵抗感も小さくて済む。第1号として高機能黒鉛大手、東洋炭素への経営参画を進めており、近く臨時株主総会の開催を求める。
(引用終わり)


記事によれば、株主権を自益権と共益権に分け、個人株主から後者のみを取得して、集めた議決権を会社に対して行使するというスキームのようです。

もっとも、会社法は株主権を自益権と共益権とに区別しているわけではなく(概念上の区別は明確ですが)、自益権を有するが共益権を有さない株主権とか、その逆の株主権の存在は想定していないといえます。

株主総会で議決権を行使できるのは株主名簿上の株主(自益権とか共益権とか関係なく)であることは明確です。

記事のスキームは、個人株主が信託銀行に株式を信託譲渡して信託銀行が株主名簿上の株主(議決権者)となり、個人株主は信託受益権者となることが推測できます。ファンドは、個人株主に一定の対価を支払って共益権を取得(正確には、個人株主から議決権行使を授権される委任関係のように思われます)し、その授権に基づき、個人株主をいわば代理して、信託銀行に対して議決権行使を指示するというような関わり方のように考えられます(完全に推測ですが)。

そうすると、個人株主とすれば、共益権譲渡の対価及び自益権に基づき取得する配当やキャピタルゲインから、信託報酬やファンドへの手数料・報酬等を支払うことになり、本件スキームを利用することによりそれらのコストを上回る配当等増加の利益を獲得できるかどうか、という利害状況になるように思われます。共益権の対価をどう評価するのか、配当増加や株価上昇に対するファンドの寄与度をどう評価するのか、逆に、配当減少や株価下落の場合の損失負担をどう配分するのか(ファンドは金銭的責任を負うのか。負わないと思われるが。)など、興味深いところもあります。

委任状勧誘(プロキシファイト)が、個別の議案について、勧誘者が議決権行使方針を明示してそれに賛同する委任状を集めたうえでその通りに議決権行使するというものであるのに対し、本件は、包括的な議決権をファンドに譲渡(委任)するという点が異なるようといえそうですが、上記のような確定コストを負担してまで、赤の他人のファンドに議決権を自由裁量に近い形で委ねる個人株主の需要がどれほどあるのかという点でも注目されるところです。

posted by kinyu-bengoshi at 17:59| 日記
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