2013年07月19日

銀行の企業向け貸出金利 低下か上昇か

「資金需要じわり回復 金利低下が後押し」(日本経済新聞2013.7.10)

(記事一部引用)
 企業や個人の資金需要がじわりと回復している。銀行の6月の貸出平均残高は前年同月比2.2%増え、約4年ぶりの高い伸びとなった。貸し出しの増加は1年9カ月連続。けん引役は海外M&A(合併・買収)などの融資や、住宅ローンだ。
 みずほ銀行などは9日、大企業向け貸出金利の指標となる長期プライムレート(最優遇貸出金利)を年1.30%から0.05%高い同1.35%に引き上げると発表した。
(引用終わり)


日銀による異次元の金融緩和は、市場への大規模資金供給により金利の低下を促す狙いがあります。
借り手企業においては銀行からの貸出金利の低下により設備投資がしやすくなり、それにより景気が刺激されるという効果が期待されるところです。
実際、貸出金利の基準利率として用いられる全銀協TIBORは低下しており、近時の政府や日銀の景気判断でも設備投資の回復傾向が示されています。

他方で、記事にもある通り、みずほ銀行が長期プライムレートを4か月連続で引き上げました。
長期プライムレートは最優遇貸出金利と呼ばれ、企業向け貸し出しにおける基準となる金利のような言い方をされますが、実際にそのような機能を有していたのは昔のことで、今は長プラを基準とする企業向け貸し出しはほとんどないものとみられます。
したがって、みずほ銀行が長プラをいくら引き上げても実際の企業向け貸し出しにそのまま適用されることはあまりなく、金利上昇による悪影響はあまりないとみられますが、メッセージとしてはいかにも、このご時世に貸し出し金利を引き上げるのか、銀行は自行の利益のみを考えているのか、という無用の反発や違和感を覚えさせかねないものといえます。

一民間銀行が景気回復に責任を持つわけではないのですが、政府・民間が総力を挙げて経済再生に取り組んでいる中で、メガバンクのこのようなメッセージは若干寂しいものがあるように受け止められそうです。

また、みずほ銀行は中堅中小企業向けに低利融資1000億円の枠を設定すると報じられましたが(日本経済新聞2013.7.6)、融資枠の総額もメガバンクにしては物足りず、金利引き下げ幅も0.1%となんとも微妙です。しかも本低利融資制度の利用は今年9月までのようで、企業が新規に設備投資を決定して借り入れを実行するには期間が足りずいかにも使い勝手が悪いと言わざるを得ず、なぜそれほど急いでやめるのか、自行の9月決算に向けた営業策にすぎないのではないか、などという見方もされそうです。これくらいならばやらない方がよいのではないかとも言われかねないくらいその本気度に疑問が投げかけられそうです。
他のメガバンクや地銀・信金が中小企業向けの資金供給で様々な取り組みを積極的に打ち出している中で、メガバンクの一角のみずほ銀行のこの一歩引いたような感じはやや寂しさを覚えさせるものといえそうです。

(なお、上記の低利融資制度についてみずほ銀行の正式プレスリリースがありませんが、上記日経記事を否定する発表もないので一応概ね事実であろうとの前提ですが、当然のことながら同記事が事実であることを保証するものではありません。)

全銀協TIBORや長プラの関係等については、当ニュース解説・コラムのLIBOR問題2を適宜ご参照いただければと思います。
posted by kinyu-bengoshi at 16:16| 日記

2013年07月12日

【金融円滑化法】2013上半期企業倒産

「倒産、22年ぶり低水準 1〜6月、建設の減少目立つ」(日本経済新聞2013.7.8)

(記事引用)
 東京商工リサーチが8日発表した2013年1〜6月の倒産件数は、前年同期比10.9%減の5620件だった。上半期としては22年ぶりの低水準になった。中小企業金融円滑化法が3月に終了したが、金融機関が引き続き資金繰り支援を続けていることが一因とみられる。業種別では、東日本大震災の復興需要や民間工事の持ち直しを背景に建設業の減少が目立つ。
 負債総額は前年同期比10.4%減の1兆7987億1700万円だった。上半期としては11年以来の少なさだった。
 減少の背景にあるのが政府の対応と公共工事の増加だ。円滑化法終了後は倒産の増加が懸念されていたが、金融庁が返済条件の緩和に引き続き応じるよう金融機関に要請。「貸し出し姿勢を変化させないためのけん制効果がある」(東京商工リサーチの友田信男取締役)との指摘がある。
 業種別では、復興需要で道路や港湾の大型工事が続く建設業が16.1%減の1288件となった。減少は5年連続で、件数は過去20年で最少だった。このほかに小売業や不動産業が減少した。
 倒産件数は4月以降も低水準で推移している。同日に発表された6月の倒産件数は前年同月比8%減の897件だった。単月の数字としては今年最少だった。
(引用終わり)


上半期の倒産件数が6000件以下となるのは、22年前の1991年(平成3年)のまだバブル時代以来とのことですから、その水準の低さが際立っています。
実体経済が22年前と比べものにならないほど悪いのにこの倒産件数というのは、金融円滑化法の政策効果の大きさを改めて示すものといえます。
産業別では、記事にもあるとおり、建設業の減少が著しく、これも公共工事増の政策効果によるところが大きいといえます。
もっとも、TSRのプレスリリースによれば、今上半期の円滑化法利用企業の倒産件数は242件と前年同期比倍増(前年同期は115件)しているようで、これは今後も増えていくことが見込まれるところです。

金融円滑化法終了の影響や事業再生などにつきましては、弊事務所HPの中小企業金融円滑化法事業再生Q&A 金融機関取引の基本 事業再生・倒産編なども適宜ご参照いただければと思います。
posted by kinyu-bengoshi at 00:36| 日記

2013年07月06日

民法改正中間試案(不実表示)

「契約ルール、中小に配慮 民法改正試案 個人保証、経営者に限定 約款・法定利率も見直し」(日本経済新聞2013.2.27)
「法定利率下げ、変動制に 法制審試案 民法改正15年にも 約款の不当条項無効」(日本経済新聞2013.2.18)

民法の契約ルールの見直しを進めてきた法制審議会の部会が2月26日、法改正の中間試案を決めたとのことです。銀行などが中小企業に融資する場合に求める個人保証について経営者以外は認めないなど中小企業保護に配慮したのが特徴の一つであるとしています。消費者契約の透明性向上や法定利率の見直しも盛り込んでおり、実現すれば幅広い取引に影響がありそうだと指摘しています。


不実表示について、「銀行実務8月号」(銀行研修社)において、拙稿「特別研究 民法改正「不実表示」契約取消条項が法人取引に与える影響」が掲載されておりますので、よろしければご参照ください。
同稿は、1現行法の規律、2民法改正中間試案における規律、3銀行の法人取引で「不実表示」とされるおそれのある取引の類型、という項目建てで、3では、(1)金融商品販売、(2)保証、(3)債権譲渡の3つの場面の具体的事例を想定して、さらにいくつかのケースに分けて新規定の適用や効果等について検討しております。

当ニュース解説・コラムでは、民法改正中間試案について、個人保証法定利率消滅時効債権譲渡禁止特約約款についてもそれぞれ触れておりますので、適宜ご参照ください。
posted by kinyu-bengoshi at 10:41| 日記
リンク集