2013年05月31日

金融ADR機関向け監督指針

「金融トラブル仲裁機関向けに監督指針 金融庁」(日本経済新聞2013.5.31)

(記事引用)
 金融庁は31日、金融トラブルを裁判に進む前に仲裁する指定紛争解決機関向けの監督指針を策定したと発表した。仲裁する際の解決法が業者寄りとならないよう、業務運営を適切に実施しているかを中心に点検。問題があれば行政処分の対象とする。制度発足から約3年経過し、利用が増えており、信頼を損ねないように手当てする。金融庁が指定する機関は全国銀行協会など8つの業界団体。
(引用終わり)


金融庁の指定紛争解決機関、いわゆる金融ADR機関向けの監督指針案が公表されました。
金融ADR機関は現在8機関あり、銀行取引については一般社団法人全国銀行協会(全銀協)が指定団体となっています。全銀協は全国銀行が加盟する業界団体で、会長以下の幹部はもちろん、職員も基本的に金融機関出身者・出向者で占められています。
顧客側の企業や個人が銀行との間の取引上のトラブルの解決をADRで解決しようとすると、全銀協のADRに申立てをすることになりますが、紛争解決手続きの主宰者が、トラブルの相手方銀行も加盟する全銀協であるため、その中立性・公平性に疑義が向けられることになります。
そこで、金融庁は、金融ADR機関の中立性・公平性を確保し、その紛争解決に対する信頼を維持するため、行政上の監督を行います。そのための指針が今回公表された監督指針案ということになります。

監督指針案の概要の骨子は、
1.紛争解決等業務の運営態勢
⑴ 指定紛争解決機関の業務運営態勢
⑵ 職員の監督体制等
⑶ 紛争解決委員の選任及び排除等
2.紛争解決等業務の適切性等
⑴ 相談等を受付けた場合の対応
⑵ 苦情処理手続における留意事項
⑶ 紛争解決手続における留意事項
3.紛争解決等業務の公表・検証・評価
⑴ 紛争解決等業務の公表
⑵ 紛争解決等業務の検証・評価
4.苦情・紛争事案に関する分析結果等のフィードバック
5.関係機関との連携
とされています。

この中では、1(3)紛争解決委員の選任及び排除等、が具体的な紛争解決手続きの場面において重要になってくるといえます。
裁判でも、裁判官が一方当事者の配偶者や近親者に当たるような場合その他裁判の公正を妨げるべき事情があるときは、その裁判官はその裁判から排除(除斥、忌避)される制度があり、それにより裁判の公正を担保し、裁判に対する国民の信頼を確保することとしています(民事訴訟法23、24条)。
裁判外ではありますが紛争解決制度である金融ADRにもこの趣旨は当然当てはまり、紛争解決委員の排除制度は金融ADRの信頼確保の点で重要なものといえます。
全銀協においてすでに排除制度が整備されているか、今後整備されるかだと思いますが、金融ADRを利用する顧客側の企業や個人は同制度については頭に入れておいた方がよいといえます。

金融ADRについては、為替デリバティブについてのものですが、弊事務所HPの為替デリバティブにも記載しております。
posted by kinyu-bengoshi at 22:15| 日記

2013年05月30日

【金融円滑化法】モニタリング副大臣会議

「中小の返済猶予、累計で400万件超 3月末時点」(日本経済新聞2013.5.30)

(記事引用)
 3月末に終了した中小企業金融円滑化法に基づき、金融機関が中小企業の借金返済を猶予した件数は累計400万件超となった。30日、中小企業の資金繰り動向を監視する副大臣会議で金融庁が明らかにした。円滑化法終了で金融機関や公的機関による追加支援が必要な企業は5万〜6万社とされる。
 同法はリーマン・ショック後の景気低迷を乗り切るため2009年末に始まった。個人向け住宅ローンの返済猶予も対象としており、累計件数は26万件だった。会議後に会見した世耕弘成内閣官房副長官は住宅ローン金利が上昇傾向にあることについて「少し注視をしていく必要がある」と述べた。
(引用終わり)


同会議の金融庁資料によれば、平成25年3月末時点の中小企業者向け貸付条件変更状況は、申込み437万件、実行407万件、取下げ11万件、審査中7万件、謝絶10万件となり、実行率は申込み比93.3%、実行+謝絶比97.4%となったようです。
なお、上記は件数ベースですが、社数でみると円滑化法利用企業は約30~40万社と言われており(ちなみに全国の中小企業数は約420万社)、本記事も述べるとおり、そのうち5~6万社が追加支援が必要と考えられています。

また、同資料によれば、2月25日業務開始の財務局・財務事務所の「中小企業等金融円滑化相談窓口」への相談件数は5月24日までの累計で895件で、週平均だと68件となるようです。もっとも、4月1日以降は相談件数は落ち着いているようで、直近5週間は各週36~48件となっているようです。
895件の内訳は、事業融資628件、住宅ローン83件などで、また、取引金融機関に関する質問・相談・苦情等が695件、取引金融機関以外に関する質問・相談・苦情等が200件となったようです。

他方、同会議の経済産業省資料によれば、同省が所管する業界団体84団体に対するヒアリングの結果、「最近、特に4月1日以降、金融機関の融資や条件変更の姿勢に変化が見られるか」との質問には、「変わらない」が83団体、「厳しい」が1団体、「最近、特に4月1日以降、資金繰りに問題はないか」との質問には、「変わらない」が82団体、「悪化」が2団体、「最近、特に4月1日以降、同業者の倒産の増加が見られるか」との質問には、「減少」が3団体、「変わらない」が76団体、「増加」が5団体、と回答するなど、5月に入ってからも金融機関の対応や事業者の状況について目立った変化は見られず、大きな混乱は見られないとしています。

平成24年度補正予算における中小企業・小規模事業者に対する資金繰り支援・経営改善支援策の利用状況については、セーフティネット貸付(平成25年3月1日から5月17日まで)が35,929件、7297億円、資本性劣後ローン(平成25年3月1日から5月17日まで)が156件、109億円、借換保証(平成24年12月1日から平成25年4月30日まで)が76,985件、1兆4709億円と、短期間で相応の件数、金額が発動されたという印象を受けるところでもあり、上記のようなヒアリング回答結果の背景として、これらの円滑化法終了後のテコ入れ策が一定程度奏功した要因もあるといえそうです。

金融円滑化法終了の影響や事業再生などにつきましては、弊事務所HPの中小企業金融円滑化法事業再生Q&A 金融機関取引の基本 事業再生・倒産編なども適宜ご参照いただければと思います。
posted by kinyu-bengoshi at 23:41| 日記

2013年05月23日

官民ファンド監視委員会

「「官民ファンド」の監視を委員会で議論 政府、成長戦略に向け」(産経新聞2013.5.20)

(記事引用)
 政府は20日、成長戦略で本格活用が見込まれている「官民ファンド」に対する監視のあり方を有識者らが議論する「官民ファンド総括アドバイザリー委員会」の初会合を開いた。
 官民ファンドは、政府と民間企業が共同出資した基金。座長の世耕弘成官房副長官は「国民の税金を使う以上しっかり機能しているかをチェックする必要がある」と強調した。
 この日の会合では、すでに運用されている産業革新機構などの現状が報告された。有識者からは、官民ファンドについて民間側の出資割合を十分に高めて、民間ノウハウを生かさないと「単純な国家ファンドに陥る危険性がある」といった意見が出た。
 委員会は、官民ファンドが政策目的に沿って投資案件を選定しているかなどをチェックする仕組みを検討し、6月中に結論を出す方針。
(引用終わり)


官民ファンドに対する監視のあり方を議論する政府内の委員会が設置され、初会合が開かれたようです。
官民とはいえ、あくまで官が主導し、民は少ない金額を出資して協力するという形態が多いので、官製ファンドと言った方が実態にあっているかもしれません。
その官製ファンドの監視のあり方を、それを成長戦略で活用促進しようという官(政府)自らが議論するというものですので、お手盛りではないか、単なるアリバイ作りではないか、との指摘も想定されるところです(なお、委員会のメンバーは、内閣官房副長官以下省庁関係者15人、民間有識者4人)。

例えば、今回初会合で議論された4ファンドの1つ、株式会社産業革新機構(出資割合:官2660億円、民27社・2個人140.1億円、政府保証借入枠1.8兆円)について、会議資料を見る限りでは、同社の投資基準や投資先企業(ルネサスエレクトロニクス、LCCのピーチ、イタリア太陽光発電、チリ水事業など39社6200億円)からみて、民間の投資ファンドとどこが違うのかわかりにくいようにもみえそうです。おそらく、リスクが大きく民間ファンドではとれないリスクを取っているという説明が想定されますが、そんな民間でさえ敬遠するリスクを国が取ってよいのかとか、逆に、ルネサスのように民間ファンドが手をあげていたのを横取りしたではないか、などという反論も受けそうです(今回初会合で実際にどのようなやりとりがあったのかは議事概要が公表されるようです)。

ちなみに、会議資料では記載されていませんが、同社が公表している決算資料によれば、平成24年3月期は売上高2百万円(その前2期は0)、最終損失44億円で、同期末累積損失は87億円となっており、最終的な資金出損者たる国民からみると、これまでのところ、ファンド運営開始後3年間売上が全くない中で毎年30〜40億円もの販管費(その内訳は不明)が先行して流出しているというその経営実績は不安を感じさせるような内容といえそうです(近く公表される平成25年3月期でみると状況は違うのかもしれません)。もっとも、これら投資先企業の株価が上がり十分な売却益を確保できればこれまでの先行費用を回収して余りあることになり、これがまさにファンド事業なのですが、具体的にどういう人たちか、その経歴や過去の投資成績もわからず、運用結果に対してどのような責任を負う形になっているのかもわからないファンドマネージャーの報酬その他人件費、経費等に毎年30〜40億円払って最終的には国民の負担に帰する国のお金を投資運用されているという官製ファンド事業の仕組みについてはほとんどの国民が知らないものとみられます。

民間ファンドであれば、ファンド運営者は投資家のリターン要求のプレッシャーにさらされますが、官製ファンドの場合は、自分が投資家であることも自覚していない広く国民一般が実質的な投資家ですから、ファンド運営者に対する規律はどうしても緩くなりがちとされていますので、このようなオープンな形で監視のあり方が議論されることは意義のあるところといえます。もっとも、そもそも議論の前提とすべき決算資料などの開示資料は販管費の内訳すらも不明で中小企業の決算書以下であり、銀行に提出しても突き返されるようなレベルではないか、決算データの内訳やファンドマネージャーの情報、投資先企業の業績などの基本的情報すら開示されていないなかでちゃんと議論できるのか、監視のあり方などわざわざ議論するまでもなく、少なくとも金商法所定の有価証券報告書と同レベルの情報と投資先企業の業績を開示して実質的な投資家でありリスク負担者である国民に広くさらせばそれで監視としては十分であり、あるいはそれが先ではないか、それすらもないのに監視などありえるのか、などという指摘もありえそうです。

いずれにしても、さんざん痛い目にあい今もその処理が問題になっている第三セクターの二の舞になることがあってはならないのはいうまでもないところです。

官民ファンドについてはこれまで当ニュース解説・コラムの【金融円滑化法】都内地銀の官民ファンド緊急経済対策・劣後ローン官民ファンド【金融円滑化法】地方中小企業再生ファンド官民ファンド機構支援先企業の2次破綻などでも触れておりますので、適宜ご参照下さい。
posted by kinyu-bengoshi at 18:35| 日記
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