2012年12月19日

ゆうちょ銀行の企業融資

「住宅ローン参入 段階的に ゆうちょ銀、民営化委が容認 直営限定、まず82店」(日本経済新聞2012.12.19)

政府の郵政民営化委員会が18日、ゆうちょ銀行が申請していた融資業務の参入を条件付きで容認したとのことです。住宅ローンについては直営82店で始め、5年後以降に約230の全直営店に解禁する一方、法人向け融資は大企業に限定し、中小企業向け融資は民間金融機関の配慮から見送ったようです。もっとも、金融庁は収益性やリスク管理体制を見極めるとして認可に慎重で、ゆうちょ銀が目指す来年4月の業務開始は不透明と指摘されています。
全国銀行協会などは「容認できない」と反発しているようです。


ゆうちょ銀行、正式には株式会社ゆうちょ銀行は、日本郵政株式会社の100%子会社であり、日本郵政株式会社は国(財務大臣)が100%出資していますので、実質的には国営・官製銀行といえます。
貯金残高は、(形式的)国営の郵便貯金時代から減り続けているとはいえ2012/9末残高約175兆円であり、メガバンクの預金残高(三菱UFJフィナンシャルグループ約125兆円、みずほフィナンシャルグループ約79兆円、三井住友フィナンシャルグループ約83兆円)と比べてもその巨大さがわかります。
かつての国営郵便貯金時代は、このようにして集まった巨額の郵便貯金資金(10年ほど前で約300兆円ありました)を全額旧大蔵省資金運用部(現財政融資資金特別会計)に預託して、同部がこれを原資に国策として財政投融資(住宅金融公庫などの政府系金融や道路公団、石油公団などの公共投資系の事業向け資金融通等)を行う仕組みになっていました。
小泉内閣時代に、こうした仕組みがいわゆる民業圧迫であり、効率的な資金の流れをゆがめ、民間の活力を失わせているとして、郵政民営化と政策金融改革、特殊法人改革が断行されたのは記憶に新しいところです。
その後政権交代もあって揺り戻しにあい、小泉内閣時の改革スキームは実質元に巻き戻されたものと理解されています。

このような曲折をたどっているゆうちょ銀行ですが、実際の事業実態はどうでしょうか。
2012/9中間期の決算短信によれば、総資産約196兆円のうち、有価証券が約167兆円と大部分を占め、貸出金は約4兆円(うち約2.5兆円は(独)郵便貯金・簡易生命保険管理機構という先へのもののようです)となっており、貸出金4兆円(実質1.5兆円)はかなりのものとは言えますが、資産構成からみれば、現時点では、通常の銀行とは言い難い状態と言えます。
この資金が企業融資に振り向けられるとすれば相当のインパクトがあるといえます。
もっとも、今回の報道では企業向け融資は大企業向けに限るとしていますが、大企業が必要とするような資金は民間にいくらでも余っており、あえて巨大国営官製銀行が参入する必要性があるのかは疑問があるところです。
どうせ企業融資を行うのであれば、むしろリスクマネーが行き届かない中小企業向け融資を増やした方がまだよいのではないかとの指摘が想定されます。
また、それ以前の問題として、ゆうちょ銀行の与信審査や債権管理の体制やノウハウがあるのか不明ですが、もし安易に参入して与信残高の積み上げを図るとすれば、同じく官製銀行の新銀行東京の二の舞になる恐れも否定できないところです(新銀行東京については、中小企業専業銀行・スコアリング融資で説明しておりますので、適宜ご参照ください)。
posted by kinyu-bengoshi at 23:44| 日記
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